2014 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚バリア破綻に伴う痒み発現の分子機構と新規止痒薬の開発
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13J09449
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鎌田 弥生 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軸索ガイダンス分子 / かゆみ / ケラチノサイト / 遺伝子発現制御 / アトピー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚バリアが破綻しているアトピー性皮膚炎(AD)や乾皮症の痒みは抗ヒスタミン薬が奏功しない「難治性の痒み」である。痒みは強い掻破行動と湿疹の増悪をもたらし、患者のQuality of Life(QOL) を大きく障害する。しかし、それらを制御する方法は解明されておらず、幅広い視点に立った病因解明と新規治療薬の開発が切望されている。このような背景を受けて本研究は、皮膚のバリア機能破綻に伴う難治性痒みの発現機序の解明と新規治療薬の開発を目的としている。平成26年度は、平成25年度に引き続き、痒みの難治化の鍵となる神経反発因子セマフォリン3A(Sema3A)に着眼し、表皮角化細胞におけるSema3Aの発現制御機構の解析、及びSema3A発現誘導剤のスクリーニングを行った。ヒトSema3A遺伝子上流領域の欠失変異体のプロモーターアッセイにより、Sema3A発現の促進に関わるPositive領域を同定した。Positive領域にはRORα/AP-1、Sox、GABP等の転写因子結合配列が存在した。候補転写因子の遺伝子発現をsiRNAによって抑制した結果、いずれも、Sema3A発現が50%以下まで減少した。次に、候補転写因子結合配列を部位特異的に欠失させた変異体を用いてプロモーターアッセイを行ったところ、RORα/AP-1結合部位を欠失させた変異体でSema3Aの転写活性が劇的に減少した。そこで、特異的なRORα作動薬であるコレステロール硫酸の存在下で正常ヒト表皮角化細胞を培養した結果、mRNA及びタンパク質レベルで有意にSema3A発現が促進された。従って、RORαは表皮角化細胞におけるSema3A発現制御に関与していることが示唆された。また、ドラッグリポジショニングを行い、Sema3Aの発現促進剤を探索した。既存薬ライブラリーを表皮角化細胞に添加後、Sema3Aタンパク質の発現をELISAで解析した。その結果、Sema3A発現を5倍以上促進するヒット化合物が数十種類同定された。今後は創薬を目指して、さらに詳細な検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、神経反発因子Sema3Aの発現制御に関わる基本プロモーター領域を解析し、転写因子RORαを同定することができた。平成26年度は研究成果を国際学会で発表し、研究成果の一部を論文化した。今後はさらに解析を進め、平成27年度中に論文の続報を投稿する予定である。当初の計画にあったオピオイドに関する研究は、Sema3A発現制御機構の解析及びSema3A発現促進剤の創薬研究に時間を要しているため、まだ開始できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究を踏まえ、最終年度は、Sema3Aの発現制御機構の解析を継続すると共に、Sema3A発現促進剤を同定し、AD及びドライスキンモデル動物に対する、候補化合物の止痒・皮膚炎改善効果を解析する予定である。また、表皮角化細胞におけるオピオイド系を介した痒み発生機序に関しても、研究を開始する予定である。
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Research Products
(16 results)