2014 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の環境記憶と行動の可塑性を制御する分子神経基盤の解明
Project/Area Number |
13J09506
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 博文 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 線虫 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、線虫が餌と共に経験した塩濃度を記憶して行動を変化させる仕組みを、分子及び神経レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、大きく分けて1トラッキングイメージング、2介在神経・運動神経の応答観察、3神経間の情報伝達の可視化について実験を行った。 トラッキングイメージングについては、昨年度導入したシステムを改良し、より正確に線虫を追跡することを可能にした。その後改良されたシステムを用い、塩濃度変化に対する神経応答と行動の変化とを同時に測定した。その結果、過去に経験した塩濃度(条件付け塩濃度)に応じて、刺激を与えた際の線虫の行動が逆転することが分かった。これらの結果は線虫が条件付け時の塩濃度に向かう機構を説明していると考えられる。 介在神経・運動神経の応答観察については、これまで観察してきた感覚神経や1次介在神経の下流に位置する介在神経AIZや介在/運動神経RIC/RIMの神経応答を観察することを試みた。介在神経AIZについては、神経突起の部位において応答が観察された。応答のパターンとしては条件付け時の塩濃度に応じて塩濃度変化刺激に対する応答が変化する傾向が見られ、AIB神経に近い応答が観察された。一方でRIC/RIM神経については、線虫の動きを固定する方法では応答を観察できなかったため、上述のトラッキングイメージングシステムを用い、行動中の線虫における神経応答を観察することにした。その結果、神経突起の部位において応答が観察された。現在はより詳細な解析を行っている。 神経間の情報伝達の可視化については、既存の株ではシナプス放出のインジケーターであるpHluorinの発現量が少なく、S/N比があまり良くなかったため、現在この点を改善した株の作製を行っており、その後条件付け塩濃度に応じてシナプス小胞の放出が変化するかどうかを調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、トラッキングイメージングシステムが導入され、神経応答と行動とを同時に観察した結果が得られた。またこのシステムを用いることで、より下流の介在/運動神経まで応答を観察することができた。記憶に基づく行動調節の分子機構については、新たな関連分子を明らかにできてはいないものの、感覚神経や介在神経間の情報伝達を可視化することで説明が可能になると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的にはこれまで行ってきた研究についてさらに進めていく方針であるが、最終年度ということもあり、それぞれの実験によって得られた結果をまとめていくことを重視する。すなわち、まず各実験の結果から線虫の記憶形成・行動調節の仕組みを説明するモデルを作成し、その後そのモデルを補強するための実験を行い、結果を基に適宜修正を行っていく。
|
Research Products
(1 results)