2013 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀アントニウス会の美術寄進活動研究-創造的行為者としての寄進者
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13J09548
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
茅根 紀子 実践女子大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アントニウス会 / 15世紀 / 寄進 / サヴォワ / ピエモンテ |
Research Abstract |
5月から10月にかけてトリノ大学に研究滞在した。受入教授であるクリヴェッロ教授(美術史学科)からは、中世ピエモンテ美術について様々なご教示を受けた。また、オリヴィエリ教授(歴史学科)のご助力を得て、ジャン・ドゥ・モンシェニュによるサンタントワーヌ母院附属聖母聖堂・聖三位一体礼拝堂の寄進文書、並びに同人物によるアニヴァーサリー典礼の寄進文書、計二通(リヨン古文書館所蔵)の翻字を終えることができた。またトリノを拠点に、旧サヴォワ公領(フランス・サヴォワ県、イタリア・ピエモンテ県、スイス南部)に残る多くの聖堂建築並びにフレスコ壁画の写真調査を行った。11月には二週間ミュンヘンに滞在した。中央美術史研究所では資料収集を行うと共に、アオグスティン教授に面会し研究の進行状況についてご教示を仰いだ。またアントニウス会史研究の第一人者ミシュレフスキー博士に面会し、寄進者モンシェニュの歴史的背景に関する報告者の考察について、ご指導いただいた。帰国後は受け入れ研究者である駒田准教授のご指導を受けながら、寄進活動に関する先行研究史を洗った。寄進活動研究は、19世紀末の法人格をキーワードとした法制史的アプローチから始まり、その後80年代前後にボルゴルテによって社会史的・文化史的アプローチへと大きく方法論を変え、特にドイツ語圏で盛んな研究領域となった。美術史料を取り上げ、図像分析などの美術史学的アプローチによる寄進活動の考察は、90年代から台頭してきた。先行研究史の方法論の分析を通して、これまでの寄進活動研究では、美術作品をあくまで歴史史料としての観点からしかとらえてこなかったために、寄進者の造形創造への意欲がないがしろにされてきたことが分かった。図像分析に留まらない、より総合的な美術史学的アプローチから、新たな寄進活動研究の方向性を指し示す必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリノ滞在中に古文書解読・聖堂調査を終え、ランヴェルソ分院研究ならびに寄進者ジャン・ドゥ・モンシェニュ研究が進んだため。また帰国後も寄進研究の先行研究史を批判的に検討することで、研究全体の指針を明白にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は育児休暇を4か月取得するため、当初の計画より研究がやや遅れることとなる。育児休暇から復帰後は、特に「聖三位―体礼拝堂」建造について考察し、フレスコ壁画の解釈をまとめる。ここでは、平成25年度に行った、寄進者ジャン・ドゥ・モンシェニュの二葉の寄進文書を活用する。
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Research Products
(2 results)