2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗原抗体相互作用の動的構造解析を基盤とした高機能抗体の設計
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13J09564
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
谷中 冴子 (公財)サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動的構造解析 / 抗原抗体相互作用 / NMR |
Research Abstract |
近年、抗体は有用な医薬にまで発展し、臨床治療に用いられている。しかしながら、動物への免疫で得られる抗体は、必ずしも高親和性かつ高選択性であるとは限らない。薬効の高い抗体を作製する合理的な設計法が求められているが、現状では開発途上である。2分子間の相互作用は、本来は動的であり複雑な過程を経るが、従来の蛋白質の改変においては静的な結晶構造に依存している部分が大きい。近年、NMRによる動的構造解析法が急激に進歩し、相互作用の開始点である遭遇複合体を検出できるようになった。そこで、申請者は、抗原抗体の遭遇複合体がどのように親和性や選択性へ寄与しているのかに着目し、抗原抗体相互作用の動的な過程をNMRを用いた緩和分散法により詳細に解析している。 今年度の当初の計画では、抗体の高収率な同位体標識抗体の調製系を構築し、遊離状態、結合状態のNMR測定を終了する予定であったが、抗体Hyhel-10について計画通り進行することができた。申請者は、さらに二年目の計画である抗体のシグナルの帰属と動的構造解析も終えており、解析を元に相互作用に寄与する特徴的な残基を特定中である。25年度の研究を通して、抗体Hyhel-10は意外にも、遊離状態で多くの残基が揺らぎ、大変柔軟性の高い抗体であることが明らかになった。一方、結合状態では強固な構造を取っており、この状態の変化が親和性と選択性に大きく関与していると考えられる。現在、各種変異体を用いて、より詳細な解析を進めている。6種の変異体について、すでに大量調製を終え、表面共鳴プラスモン法を用いた速度論的な結合解析を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
抗体Hyhel-10について計画通り進行することができただけでなく、さらに二年目の計画である抗体のシグナルの帰属と動的構造解析も終え、解析を元に相互作用に寄与する特徴的な残基を抽出することができた。抗体Hyhel-10は意外にも、遊離状態で多くの残基が揺らぎ、大変柔軟性の高い抗体である一方、結合状態では強固な構造を取ることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル抗体であるHyhel-10について、結合メカニズムが明らかになりつつあるが、計画当初他に2つの抗体を研究対象として掲げていた。抗原抗体相互作用をデザインし、実際に医療応用するという観点から考えて、他に解析する抗体について再検討を行っている。当初選択した2抗体はHyhel-10と大きく結合様式の異なるものであり、様々な抗体についての結合メカニズムを明らかにすることに重きをおいていた。しかし、Hyhel-10で得られた研究成果を活かし、似た結合様式の医療応用につながる抗体を選択することを考えている。
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Research Products
(6 results)