2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗原抗体相互作用の動的構造解析を基盤とした高機能抗体の設計
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13J09564
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
谷中 冴子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 構造生命科学研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高親和性抗体の設計 / 緩和分散法 |
Outline of Annual Research Achievements |
①変異体の設計法の提案 野生型のHyhel-10は結合前の状態で大きく揺らいでいるのに対し、結合後は揺らがないということが明らかになった。そこで、結合前で揺らがない状態を達成し、結合後の状態に近づけることで、親和性を向上させることが出来ないか考えた。結合前の揺らぎの大きさ(Δω)を指標とし、側鎖が大きく揺らぎの大きい残基をアラニンに置換することで、揺らぎを小さくする方針を取ることとした。また、抗原抗体相互作用界面、抗体のドメイン間界面に存在する残基は直接的に相互作用や構造安定性に影響をあたえるため、変異導入候補から除外することとした。最終的に、揺らぐ残基全体32個の中から10個を選出し、アラニン置換を導入した。
②各種変異体の作成と評価 設計した変異体を発現、精製し、等温滴定型熱量測定(ITC)を用いて結合能変化の評価を行なった。その結果、作成した10個の変異体中2個で親和性の向上が見られた。それらの変異体についてNMRを用いた緩和分散法を適用したところ、双方について、抗体のVHドメインで顕著な揺らぎの低下が見られた。この結果は、結合前で揺らがない状態を実現することで、親和性を向上させうることを示すものである。一方、従来からの手法による親和性解析は2つの変異体において、親和性向上のメカニズムが異なることを示していた。ITCの結果はそれぞれの変異体で、結合能変化の駆動力がそれぞれエンタルピー、エントロピーと正反対であることを示していた。示差走査熱量測定の結果は、双方の変異体で結合状態が安定化されることを示していた。一方、結合前の状態では一方の変異体でのみ安定性の低下が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は、抗原抗体の遭遇複合体がどのように親和性や選択性へ寄与しているのかということに着目し、NMRを用いて抗原抗体相互作用の動的な過程を解析している。今年度行う予定であった、各種変異体の作成と親和性の評価を行うとともに、三年目の計画である変異体の動的構造解析、及び高親和性のデザインの手法提案を進めている。研究成果の内容は期待以上のものであった。抗体Hyhel-10の揺らいでいる領域で抗原結合に直接関与しない残基に変異を導入すると、親和性が向上する変異体を得ることができた。親和性が向上した変異体について揺らぎの解析を行ったところ、抗体のVHドメインにおいて、顕著な揺らぎの低下が観測された。現在、揺らぎが観測された部位の揺らぎを無くすような変異導入により親和性を向上させる手法の提案を行うべく、論文化を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目の計画であった変異体の動的構造解析、及び高親和性のデザインの手法提案を既に進めている段階であり、今後は異なる抗体を用いて手法の有用性の更なる検証を行っていく。現在用いているHyhel-10よりも有用なターゲットとして9E10 (癌抗体)や CT3XC(毒素抗体)などを挙げていたが、近年はドメイン抗体の有用性が取り沙汰されており、有用性の検証を行うためのターゲットの変更を検討している。
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Research Products
(7 results)