2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09592
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
目黒 将史 青山学院大学, 文学部日本文学科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 薩琉軍記 / 琉球 / 薩摩 / 異国合戦 / 侵略文学 |
Research Abstract |
本研究は、いまだ一般に認知されていない〈薩琉軍記〉を文学作品として研究の姐上に上げ、一般に周知し、認識させることを目標としている。〈薩琉軍記〉を含め、江戸期の軍記の研究は立ち後れているのが現状であるが、その大きな要因としてテキストの公刊が遅れていることが指摘される。よって作品の蒐集、翻刻が必要不可欠である。本年度は架蔵本の『島津琉球合戦記』を翻刻した(「立教大学大学院日本文学論叢」13号に掲載)。そのほかに『薩琉軍談』『琉球静謐記』『島津琉球軍精記』の三点を蒐集した。この三点についても随時公開していく。 最も大きな成果としては、「首里之印」が押印された伝本を発見したことである(沖縄ワールド所蔵『島津琉球軍精記』、沖縄県立博物館・美術館寄託資料)。「首里之印」は本来、琉球王国における任職文書である「辞令書」や王府認定の「家譜」に押印される王府の正式な朱印である。そのような朱印が〈薩琉軍記〉のような散文に押印されている事例はなく、この朱印は偽造されたものと考えられる。しかし、王府の朱印が偽造され押印された事実は見過ごすことができない。さらに、朱印が押印された伝本は島津家の家譜を物語る島津家由来課を意識的に書写していないのである。詳細は学会発表を予定している。 異域(異国、異界)、異国合戦(国防)をめぐる研究会を開催した。2015年度には韓国における国際研究会を計画している。現在、東アジアにおける日本の位置づけが問われている。〈薩琉軍記〉に描かれる異国琉球との合戦の分析は、江戸後期の対外認識と現代の認識とをつなぐものであり、様々な角度からの学際的研究が必要とされている。この研究会はその先鋭をいくものとなろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多数の〈薩琉軍記〉の伝本を発見できた。とくに「首里之印」が押印された伝本の発見は、〈薩琉軍記〉が偽書として偽作され享受された背景を裏付けるものとなであろう。異域をめぐる研究会も順調に行われており、最終年度の韓国における国際研究会へ向けた足がかりができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き〈薩琉軍記〉伝本の蒐集を進めるとともに、翻刻作業を行っていく。また、各図書館所蔵の〈薩琉軍記〉伝本の調査も行っていく。 異域をめぐる研究会も定期的に行っていき、最終年度の国際研究会へ向けた中間発表として、立教日本学研究所例会での研究発表会を予定している(2015年1月)。
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Research Products
(3 results)