2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09592
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
目黒 将史 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 薩琉軍記 / 琉球 / 薩摩 / 異国合戦 / 侵略文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いまだ一般に認知されていない〈薩琉軍記〉を文学作品として研究の俎上に上げ、一般に周知し、認識させることを目標としている。そのため、伝本の悉皆調査、蒐集が目的となる。今年度、多数の伝本を発見し蒐集することができた。これらの伝本については翻刻、公開の用意がある。 昨年度発見した「首里之印」が押印された伝本(沖縄ワールド所蔵『島津琉球軍精記』、沖縄県立博物館・美術館寄託資料)について学会発表を行った。「首里之印」は本来、琉球王国における任職文書である「辞令書」や王府認定の「家譜」に押印される王府の正式な朱印であり、そのような朱印が〈薩琉軍記〉のような散文に押印されている事例はなく、この朱印は偽造されたものと考えられることを明らかにした。 また、江戸中期から幕末にかけて高まる異国意識について、異国を意識した言説が芽生えていき、再度それらの言説が語り出されていくということについて、学会で発表、論文化することができた。〈薩琉軍記〉が史書として読まれ、享受されていく様相を解明するとともに、江戸中期からの対外情勢の変化、時代状況に即応する侵略言説の流布を明らかにした。 昨年度から引き続き、異域(異国、異界、境界)、異国合戦(侵略、国防)をテーマをめぐる研究会を開催した。2015年度には韓国における国際研究会を計画している。その中間報告会として、立教大学日本学研究所の協力のもと、シンポジウム「〈異域〉をめぐる文学」を開催できた。現在、東アジアにおける日本の位置づけが問われている。〈薩琉軍記〉に描かれる異国琉球との合戦の分析は、江戸後期の対外認識と現代の認識とをつなぐものであり、様々な角度からの学際的研究が必要とされている。この研究会はその先鋭をいくものとなろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多数の〈薩琉軍記〉の伝本を発見できた。これはいまだ一般に認知されていない作品である〈薩琉軍記〉の悉皆調査において必要不可欠であり、多数の伝本の発見は大きな研究成果であると言える。 伝本の発見における結果を学会で発表することができ、これまでの研究調査の成果が目に見える方ととしてあがっている。 異域をめぐる研究会は順調に行われており、立教大学日本学研究所におけるシンポジウムの開催など成果が上がっており、最終年度の韓国における国際研究会へ向け準備を整えられている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き〈薩琉軍記〉伝本の蒐集を進めるとともに、翻刻作業を行っていく。また、各図書館所蔵の〈薩琉軍記〉伝本の調査も行っていく。 異域をめぐる研究会も定期的に行っていき、今年度は韓国における国際研究会を予定している(2015年11月)。
|
Research Products
(5 results)