2013 Fiscal Year Annual Research Report
同位体パルスラベリング法を駆使した樹木根圏炭素動態とその制御機構の解明
Project/Area Number |
13J09602
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
牧田 直樹 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 樹木根 / 炭素動態 / 同位体 / 森林生態系 |
Research Abstract |
本研究申請課題である『同位体パルスラベリング法を駆使した樹木根圏炭素動態とその制御機構の解明』では、炭素安定同位体パルスラベリング法を樹木に適用し、地上部から地下部への炭素の循環速度・滞留時間・配分比を明瞭にするため、炭素の流れを可視化し連続観測を行うことである。 初年度は、受入研究者および、同位体手法に詳しいヘルシンキ大学や北海道大学の研究者により、最新の技術・方法といった研究手法のノウハウをご教授いただいた。また電源系統の整備、および同位体分析装置、多チャンネル切り替え装置・自動開閉式チャンバー、温度・含水率計を設置し連続観測体制の整備などを進めることができた。予備実験として実生苗を対象に13Cパルスラベリング同位体実験を行った。この手法は、樹木に透明な袋をかけ、光合成産物を13Cで短期間標織することにより、炭素の樹木内部動態を解明することが可能となる。調査は完全展葉期である8月に野外で実施された。土壌面から放出されるCO2同位体比は、レーザー同位体分光計測装置と開放型動的チャンバーを組み合わせたシステムで連続測定された。結果、葉にラベリングしてから23-26時間後に、土壌13CO2放出の高いピークが観測された。その後、土壌13CO2放出は、光合成有効放射量や温度と関係し、1日1中に高く、夜間に低かった。つまり同化された13Cは、日中に根呼吸として多く消費された。土壌13CO2放出は日変化を繰り返しながら、2週間かけて緩やかに減少していった。以上より、実生苗の根呼吸として放出されるCO2は、新旧混合の光合成産物で構成されており、その放出パターンは日変化することが示された。根の炭素源代謝・分配は、植物の要求量・環境要因によって制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、技術的なノウハウの習得および研究体制の整備を目標に掲げていたが、多くの研究者のご教授により概ね達成することができた。また、同位体を用いた予備実験、根の呼吸速度・分解呼吸速度に関する研究にも従事することができ、その成果は、日本生態学会・森林学会・国際土壌学学会で発表している。このことより、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、実際の野外/実験室において植物を対象に13Cパルスラベリング同位体実験を実施する予定である。この手法は、樹木に透明な袋をかけ、光合成産物を13Cで短期間標識することにより、炭素の樹木内部動態を解明することが可能となる。葉で吸収された同化産物が土壌だけではなく、根や菌根菌への到達時間(循環速度・滞留時間)を連続フラックス観測によって定性評価したいと考える。
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Research Products
(14 results)