2014 Fiscal Year Annual Research Report
保護基フリー触媒的多連続不斉アルドール反応による次世代ポリオール合成
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13J09610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 久美子 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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Keywords | アルドール反応 / 不斉反応 / ポリオール |
Outline of Annual Research Achievements |
アルドール反応は炭素-炭素結合形成を伴い、キラルビルディングブロックとして価値の高いβ-ヒドロキシカルボニル化合物を与えるため、その発見から現在に至るまで140年以上に渡り研究されてきた。しかし、既存の手法を複雑分子合成に適用しようとすると、官能基の保護・脱保護や酸化還元操作が必須であり、天然物など複雑な分子骨格を立体選択的に構築できる最も基本的かつ効果的な方法でありながら、アルドール反応の持つ潜在力は未だ最大限発揮されているとは言えない。そこで、次世代アルドール反応を「高度に修飾されたポリオール、究極的には高分子の高立体選択的、超効率的合成」であると考え、保護基フリー触媒的多連続不斉アルドール反応の開発に取り組んでいる。 昨年度の研究結果から、保護基フリー触媒的多連続不斉アルドール反応による次世代ポリオール合成達成のためには、新たな反応系が必要であることが分かった。即ち、これまではアクセプターとなるβ-ヒドロキシアルデヒドの活性化に主眼を置いてきたが、今後は非常に高い反応性を有するドナーを選択的に発生させることで目的の多連続不斉アルドール反応を実現しようと考えた。そこで、当研究室の過去の報告で高い求核性を有することが既に分かっていた銅エノラートに着目した。アルデヒド由来の銅エノラートは発生法や反応性についての知見が皆無であったため、共同研究者とともにホウ素やケイ素からのトランスメタル化による生成を試み、所望のエノラート生成と続くアルドール反応が高立体選択的に進行することを見出した。これにより、触媒的不斉アルデヒド交差アルドール反応を達成した。既にマルチアルドール反応まで展開可能な反応系に成り得るという知見を得ており、引き続き検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、ハイブリッド型新規含ホウ素触媒によるβ-ヒドロキシアルデヒドの活性化と続くアルドール反応が、想定外の安定中間体生成のため困難であることを明らかにした。現在は研究課題実現のため、非常に高い反応性を有するアルデヒド由来のエノラートを選択的に発生させることで目的の多連続不斉アルドール反応実現を試みている。現段階で非常に良好な結果を得ており、今後の検討により研究課題実現に大きな進展があると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ダブルアルドール反応は一段階目のアルドール反応に増して困難であると予想される。第一に、アルドール反応成績体であるβ-ヒドロキシアルデヒドは、立体障害が増し反応性の低下が懸念されるにも拘らず不安定である。この課題に関しては、既に銅エノラートの有する高い反応性により解決可能であることを明らかとした。第二に、β-ヒドロキシアルデヒドはそれ自体が不斉点を有している。したがって基質のキラリティを利用したジアステレオ選択的な反応によっても、ポリオール合成に有効な立体制御を達成することは可能である。しかし、基質のキラリティに依存しない立体制御を実現する強固な不斉触媒系の確立を目指したいと考えている。既に触媒再生段階を促進する反応剤が、触媒のキラリティによる立体制御に重要であるという知見を得ており、引き続き検討を行う予定である。第三に、アルドール生成物は4個、ダブルアルドール生成物は最大32個の立体異性体を生じ得る。反応後には未反応のβ-ヒドロキシアルデヒド、ダブルアルドール生成物、副生成物が混在するため、解析は困難を極める。この課題に対し、反応後の還元操作とLC/MSを駆使した解析により解決の糸口を掴んでおり、この手法を用いてダブルのみならずマルチアルドール反応に至るまで検討を進める予定である。 以上の点を踏まえ、今後は高立体選択的なダブルアルドール反応の達成とマルチアルドール反応への展開を見据えた検討を行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)