2013 Fiscal Year Annual Research Report
明治期法律用語の研究 -近代漢語研究の一環として-
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13J09613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南雲 千香子 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 法律用語 / 箕作麟祥 / 洋学資料 / 対訳辞書 / 『仏蘭西法律書』 |
Research Abstract |
本課題の研究の目的は、明治期法律用語の成立・普及の様相を通して、1、明治期法律用語の性格の把握、2、法律用語の上代から近代にいたるまでの変化の解明、3、法律用語を中心にした日本語学における仏学の影響を調べることの3点である。今年度はこの目的を達成するための基盤となる、明治期法律用語の成立について主に研究を進めた。まず、幕末の対訳辞書がどの程度明治期法律用語の成立に影響しているかを見るために、明治期の法学界において影響の強かった箕作麟祥訳『仏蘭西法律書』の訳語と、『仏語明要』『英和対訳袖珍辞書』『英華字典』など、幕末期に編纂された仏和辞書、英和辞書、英華辞書の訳語とを比較した。その結果、仏和辞書、英和辞書、英華辞書の訳語と、『仏蘭西法律書』の訳語との間には特段の影響関係が見られないことが明らかになった。今まで『仏蘭西法律書』と既存の洋学資料との関係性を見た研究はなく、この研究は明治期法律用語の成立過程を観察するにあたって極めて重要であると考えられる。なお、この研究は2013年6月2日、大阪大学で行われた日本語学会春季大会において口頭発表を行い、その口頭発表を踏まえた論文が『国語と国文学』91巻3号(2014年)に掲載された。また、明治期法律用語の成立過程を追う別の観点として、箕作麟祥が翻訳の際、どのような過程を経て訳語を選定しているのかを考えるため、『仏蘭西法律書』の草稿を所蔵している岡山県津山市の津山洋学資料館に資料調査に行った。さらに、国立国会図書館憲政資料室蔵「箕作阮甫・麟祥関係文書」の中にある箕作麟祥が編纂したとみられる仏和辞典の草稿についても資料調査に行き、翻刻を『日本語学論集』10号(2014年)に掲載した。この仏和辞典の草稿は、麟祥の訳語の選択の過程、ひいては明治期法律用語の成立の過程が明らかになるだけでなく、上記にあげた3、の目的にも関連し、当時の仏学のあり方を見るのにも格好の資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的1、明治期法律用語の性格の把握、2、法律用語の上代から近代にいたるまでの変化の解明を行う基盤となる、明治期法律用語の成立過程の解明について一定の進展が見られ、また法律用語を中心にした、日本語学における仏学の影響を調べることについても一定の成果があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は箕作麟祥の訳語と、その祖父で蘭学者の箕作阮甫の訳語を比較することで、江戸時代の蘭学と明治時代の法律用語の間に関連性があるのかを確認するとともに、漢訳洋書の用語との比較も行い、明治期法律用語の成立過程をより一層明らかにしていきたい。また訳語の出自の種類や語構成の面からも明治期の法律用語を調査し、明治期の法律用語が、同時代の他分野の学術用語に比べてどのような特徴を持つのかを明らかにしていきたい。さらにフランス語学習や仏和辞書の編纂が日本においてどのように展開されていたかを概観し、その上でフランス法の翻訳が日本語に与えた影響を考えていきたい。
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Research Products
(4 results)