2014 Fiscal Year Annual Research Report
明治期法律用語の研究 -近代漢語研究の一環として-
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13J09613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南雲 千香子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 法律用語 / 箕作麟祥 / 洋学資料 / 『仏蘭西法律書』 / 加太邦憲 / 傍訓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究の目的は、明治期法律用語の成立・普及の様相を通して、1、明治期法律用語の性格の把握、2、法律用語の上代から近代にいたるまでの変化の解明、3、法律用語を中心にした日本語学における仏学の影響を調べることの3点である。今年度はこの目的を達成するための基盤となる、明治期法律用語の成立について主に研究を進めた。 上記の目標を達成するための基本資料となる『仏蘭西法律書』について、本年度は「箕作麟祥訳『仏蘭西法律書』における傍訓付き漢語について」と題した論文を雑誌『日本語学論集』11号(2015年3月)に掲載した。これは『仏蘭西法律書』全法典における傍訓の付された漢語について、その特徴を、傍訓の付されていない漢語と比較することによって明らかにすることを目的としたものである。その結果、『仏蘭西法律書』の傍訓付き漢語はの特徴としては、用例を同時期の他資料に見出しにくく、唐話辞書に比較的集中して用例が見られることや、当時まだ定着の薄い語や、本来の語の意味とは若干意味の異なる語である場合もあることが明らかになった。 また、『仏蘭西法律書』がその後の法学にどの程度影響を与えたのかを解明するため、『仏蘭西法律書 民法』と同様にフランス民法典を翻訳した、加太邦憲訳『仏蘭西民法』の訳語との比較を行った。その結果、全体的に加太の『仏蘭西民法』は箕作の『仏蘭西法律書 民法』の訳語を踏襲し、その上で、必要に応じて訳語を改編したものと見られる。その理由としては、結局は箕作の訳から完全に脱却した翻訳を作ることが出来なかったことが考えらる。 この他、上記にあげた目的3の達成を目指し、長崎市歴史資料博物館で江戸期に成立した仏和辞書である『払郎察辞範』の調査及び撮影を行った。この『払郎察辞範』が明治期の法律用語の成立にどのような影響を与えたのかは目下調査・検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 本課題の目的1、明治期法律用語の性格の把握、2、法律用語の上代から近代にいたるまでの変化の解明を行う基盤となる、明治期法律用語の成立過程の解明について進展が見られたため。 また法律用語を中心にした、日本語学における仏学の影響を調べるための準備として、日本各地に所蔵されている仏学資料の調査・撮影についても一定の成果があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
箕作が残した『仏蘭西法律書 憲法』の草稿(津山洋学資料館蔵)と、実際に刊行された『仏蘭西法律書 憲法』の訳語を比較し、訳語の改変の様子を観察する予定である。また蘭学と明治期法律用語との関連性を考察するために、麟祥の祖父で蘭学者の箕作阮甫が翻訳した『和蘭律書』(オランダの民事訴訟法の翻訳、国立国会図書館蔵)や、『訳鍵』『和蘭字彙』といった当時の蘭和辞書との訳語の比較も行う。 また訳語の出自の種類や語構成の面からも明治期の法律用語を調査し、明治期の法律用語が、同時代の他分野の学術用語に比べてどのような特徴を持つのかを明らかにしていきたい。さらにフランス語学習や仏和辞書の編纂が日本においてどのように展開されていたかを概観し、その上でフランス法の翻訳が日本語に与えた影響を考えていきたい。
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Research Products
(3 results)