2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09620
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近江 崇宏 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震 / 統計的予測 / 点過程 |
Research Abstract |
本研究課題は時々刻々変化する地震発生パターンを記述する統計モデルの構築および、それを用いた地震の確率予測精度の向上を目的としている。近年、地域の平均的な地震活動を表現する統計モデル(ETASモデル、GRモデル)が確立され、短期間の地震活動予測に用いられてきた。しかしながら地震発生パターンは系統的に変化するため、観測されるパターンが地域の"相場"から系統的にずれる事がある。本研究課題では、比較的に短い時間では既存の統計モデルが地震活動を良く記述する仮定し、地震発生パターンの変化をモデルのパラメータの変化としてとらえる事で、より柔軟なモデルの構築を目指す。地震発生パターンの変化をとらえる事は、大きな地震と関連した地震活動の異常を検知する手法の開発につながりうるという意味においても重要である。 本年度は、顕著な地震活動パターンの変化が見られる余震時系列のリアルタイムモデリング及び予測の研究を行った。大きな地震が発生するとその後におびただしい数の余震がおこるが、これまで防災上の目的から気象庁により余震の確率予測が行われてきた。この際の難点は、本震直後のデータは非常に多くの欠損を含んでいるという点と、各々の余震系列の個性が非常に強く、事前にどの程度の余震が発生するか見積もる事が困難であるという点である。まず我々はデータの欠損の問題に対処するために、状態空間法を用いて、欠損データの補完を行うような手法を開発した。そして、それを用いる事により、余震の統計モデル(大森・宇津則)の推定及びそれを用いた予測が、本震後数時間程度のデータから可能であるという事を示した。気象庁が典型的に予測に1日以上かかっている事を考えるとこれは非常に大きな改善であると考えられる。この方法により、地震活動の大きな割合を占める余震の発生パターンを短期間のデータからとらえる事が可能になりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
地震活動の中でも大きな割合を占める余震活動について、発生パターンを素早くとらえる手法の開発に成功し、さらにこの手法が予測においても役に立つことを明らかにしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
余震は地震活動の大きな部分を占めるので、余震活動の正確なモデル化は地震活動の研究には非常に重要である。さらに余震の予測は防災上においても非常に重要である。そこで本年度に開発した余震活動パターンのリアルタイム推定・予測のための統計手法の構築を一層進めていく。具体的には余震活動の長期的な予測のためのベイズ的予測を用いた方法を開発する。また、研究計画では統計モデルのパラメータの時間変動を状態空間法で推定する事を予定していたが、現在非常にうまく行っている、リアルタイムに短期間のデータから現時点でのパラメータを推定する方法を中心的に用いていく事を考えている。
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Research Products
(12 results)