2015 Fiscal Year Annual Research Report
新奇体性幹細胞標識抗体A3の生物学的特性と毛の発生・病態における機能的役割の解明
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13J09632
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
加藤 智彩 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 毛包幹細胞 / ラット悪性線維性組織球腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
【内容】研究実施計画1:A3タンパクの質量分析のために,長瀬無アルブミンラット(NAR)の肺およびMT-9誘発腫瘍(F344ラットにMT-9細胞を移植した腫瘍塊)から抽出したタンパクについて,A3抗体を用いて免疫沈降法を行った.そこで得られたサンプルを用いウエスタンブロッティング(WB)・ゲル銀染色を行ったところ,特異的バンドを検出した.このタンパクに対し,現在質量分析を実施中である.また,A3タンパクの機能解明を目的として,MT-9誘発腫瘍および毛包における,A3タンパクの細胞内局在を明らかにするために免疫電顕法による解析を行っている.研究実施計画2:MT-9培養細胞からタンパクを抽出し,WBを行った.再現性のあるバンド検出のために,現在条件検討中である.研究実施計画3:胎齢15日のF344ラットの胎子および胎盤を採取し,詳細な形態学的解析を試みた(正常な成体F344およびNARではA3標識細胞の発現に差異がないことを確認している).研究実施計画4:F344ラットの食道上皮および骨髄組織を用い,フローサイトメトリー法によるA3標識細胞分離を試み,現在条件検討中である.【意義・重要性】研究実施計画1:A3のアミノ酸配列および細胞内局在が明らかとなればラット生体内でのA3認識タンパクの機能解明につながる.またリコンビナント抗体を作製することによって,他種動物におけるA3タンパクの類似性/相違性を明らかとすることができる.研究実施計画2:MT-9の腫瘍化の特性を明らかとすることができる.研究実施計画3:代謝物質・ガス交換に特化した組織である胎盤と,分化段階の細胞から構成される胎子でのA3標識細胞発現を解析することにより,その細胞特性を詳細に解析できる.研究実施計画4:生体由来A3標識細胞の培養条件を変えたり,その発現に係る遺伝子を解析することによってA3標識細胞の機能特性を明らかとすることができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
A3タンパクのアミノ酸配列を決定する実験が遅れている.これは,毛包組織におけるA3タンパクの機能を解明する試みであるが,免疫沈降法,二次元電気泳動,WB及びゲル染色において再現性のある結果を得ることができなかった.この原因は,組織におけるA3タンパク発現量が少ないこと,もしくは抽出タンパクに対する抗体の低反応性が考えられた.そのため,組織あたりのA3タンパク発現が豊富なMT-9誘発腫瘍とアルブミンの関与が無いNARの肺を材料とし,上記の実験を行ったところ,A3タンパクの単一のバンド(100 kDa付近)の検出に成功した.現在ゲルからA3タンパクを抽出し,質量分析を実施中である.またMT-9細胞を用いて,A3発現の調節因子を明らかにする実験では,再現性のある結果を得るためにWBの条件を再度検討中である. その他の試験はおおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究実施計画1のA3タンパクのアミノ酸配列の解析を進める.免疫組織化学的解析でのA3抗体の反応性は十分であるにも関わらず,WBでのバンドの検出が安定しないことの原因として,A3抗体が構造認識抗体である可能性が考えられる.また,WBに用いる二次抗体の非特異バンドによって,A3特異的バンドの検出が妨げられている可能性がある.そのため,タンパク構造を維持したままで行うBlue native PAGEを試みたい.また二次抗体の非特異バンドに関しては,二次抗体を他のものに変更するなどの対策を考えている.研究実施計画2についても同様の問題が考えられるため,上記の対応策によって改善がみられるか検討する.研究実施計画3に関しては,解析をさらに進める.研究実施計画4のフローサイトメトリー法による生体組織からのA3標識細胞分離については,A3タンパク発現量が豊富な組織を用い,かつ固定および染色条件をさらに検討することで,再現性のある結果を目指す.また免疫電顕によって細胞内局在を明らかにする.
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Research Products
(1 results)