2013 Fiscal Year Annual Research Report
環太平洋地域におけるインド系移民ネットワークの形成と変容
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13J09662
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水上 香織 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近現代史 / インド系移民 / 自由移民 / 北米太平洋岸 / インド民族運動 / パンジャーブ |
Research Abstract |
2013年度には、当初の計画通り日本とアメリカ合衆国を中心にインド系移民関係の一次史料を調査した。日本における調査で得られた成果の一部は、2014年5月にカナダのヴィクトリア大学において開催されるワークショップ"Charting Imperial Itineraries, 1914-2014 : Unmooring the Komagata Maru"にて発表予定である。合衆国における調査では、カリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館所蔵の"South Asians in North America Collection, 1899-1974"の閲覧と収集を行った。同コレクションの多くは20世紀初頭に北米を中心として展開されたインド系移民の政治運動に関する一次史料であり、政治運動体の週刊機関紙としてサンフランシスコから世界中のインド系移民に向けて発行されていた『ガダル(Ghadr)』をはじめとして、数多くの関係資料を収集することができた。 資料調査後には移民たちを送り出した当時のインド亜大陸の状況に視点を移し、特に海外移民を多く送り出したパンジャーブ地方の社会経済状況に関して情報収集を開始した。パンジャーブ地方の歴史を対象にするにあたって、インドのジャワハルラール・ネルー大学やパンジャーブ・スタディーズ研究所、パキスタンのラホール経営大学の研究者たちを訪ね、現地で貴重な助言を得た。 研究成果の発信活動も並行してすすめた。南アジア学会の第26回全国大会においては、「北米太平洋岸におけるインド系移民社会の形成――20世紀初頭バンクーバーを中心に」と題する個人報告を行った。発表では、20世紀初頭に北米太平洋岸にやって来たインド人たちの多くが経済的成功の機会を求めて短期間に移動し得る、流動性の高い自由移民であったことを示したうえで、彼らがコミュニティとしてまとまり得た要因として政治意識の共有の他に経済的利益の追求過程での利害の一致があった可能性を指摘した。報告後には、同学会の学会誌『南アジア研究』に「20世紀初頭バンクーバーにおけるインド系移民コミュニティの形成」と題する論文を投稿し、上記の議論をより具体的な事例とともに展開した。同論稿は現在査読審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに日本と合衆国での史料調査を実施するとともに、日本南アジア学会での報告および学会誌への投稿を行うことができた。研究の進展に伴って、研究推進方策に関してはより適切なものへと見直しを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の日本と合衆国における史料調査では、インド系移民ネットワーク形成のうえで重要な役割を果たしたと考えられるインド人の活動のうち、国際的政治活動については史料が得られたが、国際的経済活動についての史料は断片的にしか得ることができなかった。当初の研究計画では、インド系移民の移民先において史料収集を繰り返したのちにインド亜大陸における移民の送り出し条件の調査をすることを考えていたが、史料収集の成果を挙げるためには先にインド亜大陸の状況を検討することが必要であると判断した。そこで今後は、19世紀後半以降に海外移民を多く送り出したインド亜大陸のパンジャーブ地方に焦点を絞り、当時の社会経済状況についての情報収集をすすめる。パンジャーブ地方の歴史を対象にするにあたり、来年度以降インドのジャワハルラール・ネルー大学において研究をすすめることを計画している。
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Research Products
(1 results)