2013 Fiscal Year Annual Research Report
神経難病患者の意志読み取りにおける、他者を理解するための資源運用の変遷
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13J09689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石島 健太郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ALS / 障害 / 介護 / 社会調査 / 質的分析 |
Research Abstract |
本年度の前半は、まず、研究課題を遂行するにあたっての議論の前提を固める作業をおこなった。具体的には、難病患者を支援する人々の役割意識を検討した修士論文をブラッシュアップし、2本の投稿論文とした。一方は公刊され、もう一方は査読過程にある。 これらの作業を踏まえた上で、本年度の後半では難病患者の介護をとりまく様々なアクターがどのように交渉し、介護のなかでおこなうべきことを構築しているのかという研究の目的に本格的に取り組むための準備を開始した。まず、理論的な視座を確固とするために、障害学理論で著名な星加良司氏のゼミに参加した。そのなかで、健常性至上主義Ableismという概念の内面化が、患者や支援者の意識を形成するにあたって重要な役割を果たしているというのではないかという示唆を受けた。そこで、この概念についての理論的検討のために主に海外の論文を渉猟した。くわえて、これらの概念を経験的に応用するための予備的な調査も開始した。その内容は2014年度において、理論的検討についてはSociety for the Study of Social Problems (2014年8月)で発表ののち、『現代理論社会学研究』に投稿論文として、経験的研究については障害学会(2014年11月)に発表ののち、『年報社会学論集』に投稿論文として、それぞれまとめ、公表する予定である。 くわえて、2013年12月には、イタリア・ミラノで開催されたAnnual Alliance Meeting of ALS/MND AssociationsおよびAllied Professionals Forumに参加した。この会議は、本研究課題が対象とする神経難病の各国の患者会や専門職が集まる世界的な会議である。この会議への参加を通じて、難病患者の療養についての世界的潮流についての見聞を深め、日本における療養の状況が世界的な状況のなかで占める特異な立ち位置を理解することができた。この経験から、自身の研究課題が相対化されるとともに、来年度以降、研究課題から得られる知見を世界に発信するにあたっての文脈を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究課題に取り組むための土台となる議論を固めることができ、論文の執筆、投稿、掲載のサイクルを順調に進めることができた。また、これまでの調査協力者に加え、新たな調査協力者と知り合い、ラポールを形成することもできた。また、上記のように、来年度以降の研究を進めていくに有意義な視点も獲得された。以上の理由から、研究は十分に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のAbleismについての議論は、2014年度において、理論的検討についてはSociety for the Study of Social Problems (2014年8月)で発表ののち、『現代理論社会学研究』に投稿論文として、経験的研究については障害学会(2014年11月)に発表ののち、『年報社会学論集』に投稿論文として、それぞれまとめ、公表する予定である。また、2014年度にデンマークで開催されるAnnual Alliance Meeting of ALS/MND AssociationsおよびAllied Professionals Forumでは、同様の難病を対象とする共同研究者とともに、日本の介護の特殊性についてポスター発表をおこなう予定である。理論的検討は当初の計画になかったが、同様の関心から経験的調査を併行しておこなうことで研究に遅れが生じないように配慮する。
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Research Products
(5 results)