2013 Fiscal Year Annual Research Report
J. S. バッハの最初期の受容史研究--音楽理論と《四声コラール曲集》出版から
Project/Area Number |
13J09705
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 薫 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | J. S. バッハ / 対位法 / 音楽理論 / 四声コラール / 18世紀 / ドイツ / 作曲技法 / 音楽学 |
Research Abstract |
本研究はJ. S. バッハの18世紀における受容について、当時の音楽理論と《四声コラール曲集》出版事業という二つの切り口からアプローチするものである。18世紀の音楽理論という問題設定は非常に広範囲に及ぶものであるため、検討対象を絞った上で理論書の読解を行うことが不可欠と考え、「作曲技法の継承」という視点を新たに加えて研究に取り組む方針を立てた。今年度の具体的な研究内容は次に示す通りである。 日本音楽学会東日本支部第16回定例研究会(2013年6月)では、これまで先行研究が比較的着目してこなかった《四声コラール曲集》を取り上げ、18世紀後半に行われたこの曲集の出版がJ. S. バッハの作曲教育、彼の後継者によって担われた作曲技法の継承と密接な関係にあったことを発表した。発表後は引き続き、このテーマが内包する諸問題について一つずつ吟味する作業を行っている。その試みの一つとして、第64回美学会全国大会(2013年10月)では対位法に焦点を当て、18世紀の音楽批評家、理論家(主にマッテゾン、シャイベ、マールプルク、キルンベルガー)がバッハの対位法をどのように捉えて論じたのかを検討した。年度の後半は、ラモーの根音バス理論をめぐるキルンベルガーとマールプルクの解釈の相違点、これを踏まえた上でさらにキルンベルガー『純正作曲の技法』(主に1771年、1776年に出版された部分)における四声コラールの位置づけの考察にも取り組んだ。研究を進める上で必要となった一次資料(18世紀に出版された楽譜資料、主にドイツ語圏で公刊された音楽理論書)については、アメリカ、ドイツでそれぞれ12月、2月に調査、収集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「作曲技法の継承」という視点を導入したことにより、対位法、キルンベルガーの『純正作曲の技法』に着目した考察を進めることができたのは、当初の計画を上回る成果である。一方、資料調査で収集した理論書の読解はまだ一部についてしか行うことができていないため、来年度以降の課題として残されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度内に詳細な検討を行うことができなかった理論書の読解に集中的に取り組み、その成果の発表に努める。またキルンベルガーの音楽理論、特に根音バス理論の解釈をめぐる点については、マールプルク以外の同時代の他の理論家との比較がまだ十分でないため、次年度に補いたい。対位法の捉え方については、音楽様式論、修辞学的音楽論といった18世紀の中心的な音楽理論の関心に照らしながら、引き続き研究を進める。
|
Research Products
(2 results)