2013 Fiscal Year Annual Research Report
チオ硫酸を優先的に硫黄源とするシステイン合成機構「チオ硫酸リプレッション」の解析
Project/Area Number |
13J09708
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
仲谷 豪 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | システイン / チオ硫酸イオン / 優先的利用 / 大腸菌 |
Research Abstract |
これまで硫黄源に関する優先的な利用機構については、分子レベルでの理解がほとんど進んでいない。大腸菌には、硫酸イオンとチオ硫酸イオンをそれぞれ硫黄源とする2種類のシステイン(Cys)合成経路が存在する。チオ硫酸経路の主要遺伝子cysMを欠損させたcysM欠損株は、硫酸イオンを単一硫黄源とする培地条件では硫酸経路を介してCysを合成できる。しかし、cysM欠損株はチオ硫酸イオンの更なる添加によりCys合成が著しく抑制されることを見出した。また、チオ硫酸経路は硫酸経路と比較して、ArpとNADPHの消費、反応ステップが少ないなどの利点がある。以上のことから、チオ硫酸イオンと硫酸イオンの両方が細胞外に存在する場合、チオ硫酸イオンによって硫酸イオンの利用が抑制され、チオ硫酸イオン優先的なCys合成が起こることが示唆された。申請者は、この現象を無機硫黄源の優先的利用機構であると考え、「チオ硫酸リプレッション(TSR)」と名付けた。本研究では、このTSRの分子機構の解明を目的とした。 平成25年度は、TSRが起こらないサプレッサー変異株の解析から、チオ硫酸イオンの取り込みにABCトランスポーターであるCysPTWAタンパク質が重要であることを明らかにした。また、マイクロアレイ解析などの実験により、細胞質内に取り込まれたチオ硫酸イオンによって、システイン生合成に必要な遺伝子群の転写を制御している転写因子CysB依存的に硫酸経路遺伝子群の転写が抑制されることを見出した。さらに、硫黄源を硫酸イオンからチオ硫酸イオンに変えることで、大腸菌の生育が促進されることも判明した。これは、大腸菌のシステイン生合成において、チオ硫酸経路が硫酸経路と比較してATPやNADPHの消費が少ないことに起因すると考えられ、TSRの生理的意義についても重要な知見を蓄積しつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
|