2013 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン系2重量子ドットを用いた高性能なスピン量子ビットの実装と 量子計算の実現
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13J09761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 健太 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ドット |
Research Abstract |
第一に、本研究で目標とする、シリコン(Si)系の2重量子ドットを用いた電子スピン量子ビットの実現のために、従来の変調ドープSi/SiGe量子ドット試料の大きな問題である電荷安定性の問題を解決する必要があった。そこで、まず、電荷不安定の原因である変調ドープを排除したアンドープSi/SiGe2重量子ドット試料の作製を行った。従来の変調ドープSi/SiGe量子ドット試料では、典型的なスピン量子ビットの実験に必要な数日程度の間、安定な電荷状態を持つ量子ドットを実現することはほぼ不可能であったが、新しいアンドープSi/SiGe量子ドットでは非常に安定な電荷状態を持つ試料を実現できる。 次に、同系における電子スピン量子ビットの実現に向けて、作製した2重量子ドット試料の極低温(30mK程度)測定を行った。まず、測定を始めるにあたって、高周波測定用の配線、極低温部のフィルタ回路など、測定系の変更、改良が必要な部分が多数あったため、それらを行った。 量子ドット試料の測定では、まず、標準的な電気伝導測定により電荷状態の安定な単一量子ドットおよび2重量子ドットの形成を確認した。加えて、ドット近傍に備えた電荷計の高周波反射測定を行うことにより、2電子のみを含む少数電子2重量子ドットの高速測定を行った。 次に、同系において、電子スピンの状態読み出しに必要であるスピンブロッケードの観測を行った。標準的な電気伝導測定よりも確実な方法である、ゲート電極に高周波パルス電場を印加する方法によって、実際にスピンブロッケードが起こっていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書では、本年度でSi/SiGe系における電子スピン量子ビットの操作、およびコヒーレンスの評価を行う予定であった。しかし、実際には同系においてこれを行うには、Si系特有の谷縮退の問題を解決する必要があることがわかったため、それに必要な当初予定より複雑なパルス測定を行っている。パルス測定そのものは順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、Si系量子ドット中の電子スピンの量子状態操作を正確に行うためには、同系特有の谷縮退の問題を解決する必要があることがわかった。そのために当初予定より複雑な、ゲート電極にパルス電圧を印加し, 量子ドット中の2電子の状態を操作する方法で測定を行っている。これにより、研究計画にあるとおり2電子スピンの操作、およびコヒーレンスの評価を行うことができる。現在の測定が終了後は、現在の試料よりはるかに長いコヒーレンス時間が実現できる同位体制御28Si/SiGe系において、同様の試料を作製および測定する予定である。
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Research Products
(3 results)