2013 Fiscal Year Annual Research Report
花の匂いの地理的変異がもたらす植物と送粉昆虫の種分化機構の解明
Project/Area Number |
13J09765
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
岡本 朋子 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 花の匂い / 送粉 / コミカンソウ / ハナホソガ / 生物間相互作用 / 進化 / 種分化 |
Research Abstract |
植物と送粉者の間に見られる共生関係の成立と維持には、両者の関係を結ぶ要因、特に送粉者が植物を選択し訪れる際に利用する情報が極めて重要である。本研究は、夜間に活動する送粉者が嗅覚情報として利用する花の匂いに注目し、植物と送粉者の種分化機構の解明を目指して行う。 カンコノキは花の匂いを用いてハナホソガを呼び寄せ、受粉を達成する。一方のハナホソガは、花の匂いを用いて寄主を訪れるだけでなく、寄主を交尾場所としても利用しているため、ハナホソガの寄主への来訪が植物のみならずハナホソガ自身の繁殖の鍵になっていると考えられる。このような系では、花の匂いの集団間の違いが、植物と送粉者の生殖隔離を引き起こし、ひいては共種分化を導く可能性が高い。そこで本研究では、(1)花の匂いの地理的変異、および(2)それに伴う送粉者の花の匂いへの選好性の分化について詳細に調べ、共種分化過程の理解を目指す。 本年度(平成25年4月1日~平成26年3月31日)は、花の匂いの地理的変異の有無の検出を目指し、まず花の匂いを日本の様々な地点で捕集と分析を行った。続いて、花の匂いの地理的変異が植物と昆虫の生殖隔離機構としてどの程度寄与しているかを明らかにすることを目指し、送粉性ハナホソガの選択行動実験の予備実験を行った。ハナホソガを用いた室内における行動実験を安定的かつ確実に行うため、ハナホソガの行動パターンを詳細に調べた(Okamoto, 印刷中)。また、GC-EAD法を用いることで、花の匂いを構成する各物質に対して、ハナホソガの感受性に違いが生じているかを調べ、これによって多くの化学物質の中から昆虫が反応できる物質の絞り込みができた。また上記のY字管実験と組合せることで、生殖隔離を支える化学物質の特定が容易になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、花の匂いの捕集やハナホソガの行動実験などが遂行できた。2013年度は研究対象である昆虫(ハナホソガ)の発生が少なく、若干の研究計画の変更を余儀なくされたものの、翌年度以降に計画を予定していた実験(触角の電位生理実験)を行うことで、技術の習得および予備的なデータを得ることができた。そのため、研究全体に遅れを出す事なく、おおむね順調に進展できたといえる。また、2013年度に得られたデータの一部はすでに論文として発表済みであり、国内の学会で成果の一部として講演することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の予定通り、フィールドにおける花の匂いの捕集、匂いの化学分析、ハナホソガの行動実験、ハナホソガの電気生理実験を軸に研究を進めて行く予定である。本研究では、実験室下での累代飼育方法が確立していない昆虫を用いて研究を行っているため、実験を行うには自生地で採集する必要がある。昆虫の発生には気温など天候の影響を受けやすいため、今後も臨機応変に状況を判断し、研究を進める必要がある。
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Research Products
(9 results)