2013 Fiscal Year Annual Research Report
巨大な酵素複合体の構築を指向したPCNAナノチューブの創成
Project/Area Number |
13J09876
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳賀 智亮 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酵素複合体 / 核内増殖抗原 / 超分子 / 足場タンパク質 / ペプチドタグ |
Research Abstract |
Sulfolobus solfataricus由来の核内増殖抗原(Proliferating Cell Nuclear Antigen ; PCNA)はリング状のヘテロ3量体タンパク質であり、これを多数会合させることで巨大な多酵素複合体の足場を構築することを目指している。本年度は、1. PCNAを足場とした酵素複合体の改良と高機能化、及び2. PCNA超分子複合体の構築を行った。(1. PCNAを足場とした酵素複合体の改良と高機能化)先行研究により、P450camとその電子伝達パートナータンパク質をモデル酵素として、PCNAを足場とした酵素複合体が構築されている。また、PCNAサブユニット間にジスルフィド結合を導入することで低濃度でも安定なPCNAヘテロ3量体が構築されている。本研究ではまず、ジスルフィド結合の形成条件を検討し、酵素複合体の活性に悪影響を与えず、かつ効率的にジスルフィド結合を形成する条件を見出した。さらに、PCNA上の電子伝達タンパク質の数を検討し、酵素複合体の活性を向上させることに成功した。(2. PCNA超分子複合体の構築)PIP-box (PCNA-interacting protein box)と呼ばれるPCNAに特異的に結合するペプチド配列に着目し、PCNA1のN末端にPCNA2を認識するPIP-boxを、PCNA2のN末端にPCNA3を認識するPIP-boxを、PCNA3のN末端にPCNA1を認識するPIP-boxをそれぞれ遺伝子工学的に融合した。PIP-boxを融合したPCNA各サブユニットは、大腸菌により可溶性タンパク質として発現し、カラムクロマトグラフィーにより高純度に精製できた。そしてPIP-boxを融合した各PCNAサブユニットを混合し、これをゲル濾過クロマトカラムに通したところ、PIP-boxを融合しない場合と比較して、約4倍の推定分子量の位置に溶出した。このことから、PIP-boxを融合したPCNAヘテロ3量体同士は会合し、PCNA超分子複合体が形成されたことが示唆された。しかし、ゲル濾過クロマトグラフィーから推定した会合度は4程度であり、さほど大きな複合体はできていないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PIP-boxを融合したPCNAを発現・精製することに成功し、PIP-boxを融合したPCNAヘテロ3量体同士が会合することが判明したものの、会合度は小さく巨大な複合体は実現できていないことから、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、PIP-boxの変異体ライブラリーを構築して、PCNAに対する親和性及び特異性の大きなPIP-boxをスクリーニングする。続いて、得られたPIP-box変異体をPCNAに融合し、巨大な複合体ができるかどうかの検討を行う。会合度を向上させることができた後、モデル酵素をPCNAに融合することにより, 多酵素複合体を構築する。
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