2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における衛生規範の変容--公衆浴場・理髪所・洗濯場の制度化を通じて
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13J09880
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
川端 美季 茨城大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公衆浴場 / 湯屋 / Public Bath Movement / 衛生 / 社会事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一般民衆の衛生規範がいかに構築されたのかを明らかにするために、日常的な生活行為である入浴、理髪、洗濯を行なう場が衛生施設とされる過程を検討し、一般民衆の衛生規範の変容を立体的に記述することを目的とするものである。平成26年度の研究実績は以下3点である。 (1)入浴と個人衛生や家庭衛生に関わる議論を整理し、日本医史学会で「明治・大正期における家政書での入浴の記述について」という報告を行なった。ここでは家庭内の入浴が乳幼児への注意について多いこととその記述も欧米からの影響があったことを明らかにした。 (2)明治期終わりから大正期にかけての官僚たちが視察した欧米の公衆浴場や洗濯などに関わる運動や議論を調査し再整理した成果をまとめ、7月のSociety for the Social History of Medicine 2014 Conferenceで「The Consequences of the Public Bath Movement in Japan」として報告を行なった。国内外の研究者との議論から、当時の各欧米諸国の社会背景と強く結びついてPublic Bathが成立していたことが示唆された。加えて、ロンドンのナショナル・アーカイヴとロンドン・メトロポリタン・アーカイヴで世紀転換期のPublic Bathや洗濯場について調査を行なった。 (3)ロンドンの調査を加え、10月の日本生命倫理学会で「世紀転換期のPublic Bath Movementと近代日本における公設浴場設置過程にみる身体観と道徳観」と題して報告を行なった。この報告の議論から欧米のPublic Bathと一言で言ってもその規模や機能が異なる点に留意すること、衛生行政及び清潔さと道徳性の関連性をより明確にすることが課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の課題である公衆浴場の制度化をはじめとする行政の働きかけのなかでの位置づけと制度施行の実態状況について検討した。このことに加え、海外からの日本への導入についての考察を通じて、清潔さと道徳性が結びついていく背景の一端について明らかにすることができた。今後は背景だけではなく、清潔さと道徳性との密接な関連性についてさらに明らかにしていくことが課題と設定されており、研究がより進化していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本の一般民衆の衛生化をすすめるために公衆浴場・洗濯場の制度化とその施行の実態状況とそれをめぐる受容に関する言説を検討し、論文を投稿する。 加えて、平成25年度・26年度の調査と考察を合わせてまとめ、近代日本における一般民衆の衛生規範の変容を立体的に記述することを目的とする。
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Research Products
(3 results)