2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 大樹 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 電子相関 / スピン軌道相互作用 / 繰り込み群 |
Research Abstract |
当該年度は、1、ディラック電子系における電子相関効果の繰り込み群を用いた解析、2、結晶性トポロジカル絶縁体における電子間相互作用の効果の解析、3、原子におけるフント則の2原子模型への拡張を行った。研究計画では物質中のトポロジカルな電子状態に対する理論的解析を目的としており、これらの研究はトポロジカルな電子状態と電子相関およびスピン軌道相互作用の協奏関係を主眼に据えたものである。 研究の具体的内容については、1では複数個のディラックフェルミオンの現れる物質を対象として電子間の相互作用の効果を繰り込み群の手法により解析した。一般に、物質中では電子の速度と光速とは異なる速さを持つが、相互作用の影響により電子の速度と光速が変化し、低エネルギー極限において両者が一致することを見出した。また、速度の変化に伴って変化する物理量を計算した。2では、結晶性トポロジカル絶縁体の端状態における電子相関の効果を解析した。結晶性トポロジカル絶縁体とは、結晶の対称性によって物質中では絶縁体であるが、その表面のみに伝導状態が現れる物質である。特に2次元の結晶性トポロジカル絶縁体では伝導状態は1次元となり、朝永・ラッティンジャー流体と呼ばれる特殊な電子状態となる。この1次元電子系における電子相関効果を、ボゾン化や繰り込み群などの手法を用いて解析し、安定性などを議論した。3では、フント則の対象を2原子系へと拡張し、電子相関効果と、電子の波動関数のトポロジカルな性質を引き起こす主因であるスピン軌道相互作用の協奏関係について議論した。スピン軌道相互作用の強い物質はスピントロニクス等の応用上も重要な意義を持つが、希少な元素が多くこれを安価で豊富な元素で実現することは大きな価値がある。ここでは、スピン軌道相互作用の電子間相互作用による実効的な増大の可能性について、ハミルトニアンの厳密対角化により調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ディラック型の分散を持った系における電子相関の効果を繰り込み群により解析し、物理量を計算することを計画していたが、当該年度にはそれに加えて結晶性トポロジカル絶縁体における電子相関の解析や、フント則の2原子系への拡張を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ディラック型の分散を持った物質では、物理量に特異な振る舞いが現れることが指摘されており、これらを理論的に解析し明らかにしていくことを、研究計画の予定通りの進展に加えて遂行していくことを考えている。
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Research Products
(5 results)