2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の教育委員会の指揮監督権に関する研究-他の行政委員会との比較を通じて
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13J10000
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
大畠 菜穂子 北海学園大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 教育委員会 / 教育長 / 指揮監督権 / 文部省 / 行政委員会 / 執行機関 / 行政組織法 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究は、教育委員会制度の骨格を形成する教育委員会と教育長の権限関係について、とりわけその指揮監督権に着目して法的考察を行うものである。初年度にあたる25年度は、教育委員会とその制度設計に影響を与えたと考えられる他の行政委員会の成立過程およびその後の変遷について歴史研究を実施した。比較対象としたのは、教育委員会法以前に設置され、指揮監督権を有していた行政委員会であり、国レベルでは、人事院、国家公安委員会、地方レベルでは、農業委員会、選挙管理委員会、監査委員、都道府県公安委員会・市町村公安委員会を対象とした。 それにより明らかにできた点は、以下の2点である。第1に、初期の教育委員会制度の構想は、教育委員会を議決機関、教育長を執行機関とし、教育長に執行権を認めるものであり、現行制度とは異なる形で構想されていたことを明らかにした。これは、アメリカの州の教育委員会をモデルにしたものと考えられ、教育委員会の制度設計として、執行権を教育委員会に集中させている現行制度とは異なる形がありうることを示唆するものである。第2に、合議体の教育委員会に包括的な執行権と指揮監督権を付与する現行制度上の方法は、日本の行政委員会に共通するものである。しかし、このうち人事院や公安委員会では、成立時には指揮監督権が付与されていたものの、後に法改正によってこれを一般的監督権や管理権に修正し、事務をつかさどる人事院事務総長・警察庁長官との役割分担を図ってきた。 総じて、行政委員会の内部構造としては、委員会が事務執行の中心になるものと、委員会は具体的な事務執行を行わず、事務部局の執行を監督する形をとるものに分けられることを明らかにした。教育委員会は、法文上は前者をとりながら、実態としては後者へ移行している。それゆえ、合議体の教育委員会がいかに教育長・事務局を監督し、それに関して具体的にいかなる責任を負うかを明確化することが今後の重要な検討課題となると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教育委員会の制度設計に影響を与えた日本の行政委員会について、その成立過程およびその後の制度の変遷を通じて、行政委員会の構造を整理できた点で、おおむね計画通りに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、日本の教育委員会制度のモデルとなったアメリカで、教育委員会と教育長の権限関係がどのように設定されてきたかを中心に考察する。考察対象とするのは、日本と同じく教育委員会が一般行政組織に組み込まれている州レベルの教育委員会であり、制度導入時である1940年代ならびに現行の教育委員会制度について資料収集及び現地調査を実施する。
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Research Products
(1 results)