2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J10025
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
銀屋 真 徳島大学, 大学院先端技術科学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 偏光顕微鏡 / 強誘電体 / 偏光計 / 偏光特性 / ミュラー行列 / PLZT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,強誘電体の結晶構造と偏光特性の関係を詳細に明らかにすることによって,光学顕微鏡に偏光計を組み込んだ簡便安価なシステムで強誘電体の結晶構造を観察することを目的としている.さらに,本手法では,試料への測定光の浸入深さを制御することで,結晶構造の3次元イメージングを可能とすることを目指す. 結晶構造の3次元イメージングを可能とするため,強誘電体表面の結晶構造を選択的に観察するための全反射型偏光顕微鏡の開発を行った.開発した全反射型偏光顕微鏡は,三角プリズムの底面にレンズを接合した変形プリズムを用いて,プリズム底面で光が全反射したときに生じるエバネッセント光を測定光として利用する.プリズム底面から空気側に数100nmの空間にのみ存在するエバネッセント光を試料に近づけることで試料表面の情報を選択的に取得する.前年度に作製した全反射型偏光顕微鏡を改良し,高精度化に取り組んだ.実証実験として,厚さがマイクロメートルオーダの位相差フィルムを積層することで厚さ方向に特性の分布を持つ試料を作製し,その表層のみを選択的に測定することに成功した.また,数種類の強誘電体の表面の状態についても測定して評価した. さらに,強誘電体の結晶構造と生体細胞の構造の類似性に着目し,本手法を応用することで生体細胞の微細な構造を生きたまま観察することが可能なのではないかと考えた.そこで,顕微鏡下で細胞を生かすための潅流装置を偏光顕微鏡に組込み,細胞の生体活動にともなう構造変化の観察に取り組んだ.生体細胞の構造から発されるシグナルは強誘電体のものに比べて小さいため,偏光顕微鏡の検出器側に干渉計を組込むことで構造変化に伴う検出光強度の変化を増幅し,測定精度の向上を図った.その結果,通常の顕微鏡では見ることの難しい細胞の生体活動にともなう微細な外形の変化を測定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強誘電体の結晶構造と偏光の相互作用を利用して,光学顕微鏡に偏光計を組み込んだ簡便安価なシステムで強誘電体の結晶構造を評価するシステムを構築している. これまで,強誘電体を透過した光の偏光状態を解析することで,厚さ方向の情報を積算して結晶構造の評価を行ってきた.ここから,厚さ方向の情報を分離して評価することで,結晶構造の3次元分布情報を取得することを目指す. 本年度は,測定光が全反射するときに発生するエバネッセント光をプローブとして用いることで,強誘電体表層から特定の深さまでの結晶構造を選択的に測定することに成功している.また,光源を強誘電体への電界印加に同期して点滅させるストロボ法を導入することで,駆動中の強誘電体の構造変化の測定に取り組んでいる.さらに,強誘電体の結晶構造と生体細胞の構造で類似する異方性に着目し,これまで行ってきた偏光計測と干渉法を組み合わせることで生体細胞の活動に伴う構造変化の測定について検討を行った.以上の結果は,当初の申請書に記述した目標を達成しており,他分野への応用へも取り組んでいることからある程度の進展があったと認められる.
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Strategy for Future Research Activity |
強誘電体には電界印加に伴う高速な構造変化を利用したデバイスが多いため,強誘電体の評価にはこの高速な構造変化を測定できることが望ましい.特に,対案手法では光を用いて測定するために,電界印加に伴う構造変化に干渉することなく測定が可能であり,駆動中の強誘電体デバイスの測定に適している.そこで,偏光顕微鏡に電気光学変調器を組み込み,測定光の光強度を試料の変化に同期させて高速で変調するストロボスコピック法を用いることで,高速で変形する強誘電体の構造変化を時間分解測定する. また,電界の印加による強誘電体の構造変化にともなって強誘電体は変形する.この強誘電体の変形は測定光の光路長の変化の原因となり,測定結果に悪影響をもたらすことで結晶構造と偏光の相互作用への理解を阻む.そこで,偏光計測と干渉計測を組み合わせることで,強誘電体の偏光特性と外形の変化を同時計測することを可能にする.これによって結晶構造の変化と外形の変化の影響を分離することで,結晶構造と偏光の相互作用について考察を行う.
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