2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化セリウムにおける粒界原子構造及びイオン伝導特性の解析
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13J10035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馮 斌 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化セリウム / 結晶粒界 / 走査型透過電子顕微鏡法 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本年度では、酸化セリウム粒界の原子構造解析を行った。 まず双結晶法を用いて、異なる粒界性格を持つ酸化ジルコニウムの対応粒界(Σ9, Σ11及びΣ13)を拡散接合させて作製し、その上にパルスレーザー堆積法を用いて酸化セリウムのエピタキシャル薄膜を成長させ、モデル粒界を作製した。 走査型透過電子顕微鏡を用いて、粒界における原子配列の直接観察を行った。各モデル粒界において、異なる周期的な構造ユニットが形成された。さらに電子エネルギー損失分光法を用いて測定を行った結果、各構造ユニットにおいてセリウムの価数が異なり、酸素空孔濃度が異なっている事が確認された。つまり粒界における局所的な化学量論組成状態は粒界の性格に依存している事が確認された。これらの結果は、格子静力学計算と第一原理計算を用いて予測された最安定構造とも一致している事が確認された。 これらの結果により、酸化セリウム粒界の化学量論組成、特に酸素空孔の濃度が粒界の性格に大きく依存する事が明らかになった。実験像と計算構造を比較しながら決定した原子構造を解析した結果、粒界の酸素空孔は粒界の局所的な酸素結合状態に依存しておる。粒界において酸素は配欠損サイトが形成され、酸素空孔が粒界に導入されることで局所歪が緩和し、エネルギー的に安定な構造が形成される。またある程度の歪を超えると、酸素空孔が形成し始め、その濃度は局所歪の上昇とともに増加することがわかった。 酸素空孔は酸化セリウム中の酸素イオン伝導特性や触媒活性に大きな影響を与えることから、これらの研究結果は材料設計の観点から非常に興味深いものと考えられ、今後粒界を積極的に制御した新機能材料の設計が可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は申請時の年次計画通りに進展している。本年度では異なる粒界性格を持つモデル粒界を作製し、電子顕微鏡法および理論計算を用いて、粒界の原子構造解析を行った。その結果、酸化セリウム粒界における粒界非化学量論組成の起源を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は昨年度得られたモデル粒界を対象に粒界物性解析を行い、酸化セリウム粒界の機能発現メカニズムと粒界原子構造の性格依存性を明らかにする予定である。具体的には : 1. 各粒界の安定構造をもとに、粒界における酸素空孔形成エネルギーを計算し、粒界構造との関係を明らかにする。2. 分子動力学計算により、粒界の酸素拡散について解析する。3. Electrochemical strain microscopyにより、粒界の酸素酸化還元反応活性について調べる。これらの結果、つまり酸化セリウム粒界の機能発現メカニズムと粒界原子構造の性格依存性を組み合わせ、酸化セリウムの粒界の本質を根本的に解明し、新規材料設計の指針を構築する予定である。
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Research Products
(3 results)