2015 Fiscal Year Annual Research Report
中世ネパール仏教説話研究-後期アヴァダーナ文献の史的展開とその大乗思想の考察-
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13J10048
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山崎 一穂 東洋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仏教説話 / 中世ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
後期アヴァダーナ文献の史的展開という研究課題に照らし (1)『アショーカ・アヴァダーナ・マーラー』第三章「アショーカ・ダマナ」のテキスト校訂とその大乗思想の考察を課題とした。しかしその過程で同章に引用されるクシェーメーンドラ(11世紀)の『アヴァダーナ・カルパラター』第69章「八万四千塔建立」のテキストに問題があることが判明した。従って本年度は同章の説話材源の解明に重点を置き研究を行った。その結果は次のように要約できる。 『アヴァダーナ・カルパラター』第69章は「八万四千塔建立」、「無学な老比丘の説法」、「天界で雨安居を行った新参比丘」という三つの物語から構成される。うち「八万四千塔建立」については『ディヴィヤ・アヴァダーナ』、漢訳『阿育王伝』、『阿育王経』、『雑阿含経』に並行話がある。しかし『アヴァダーナ・カルパラター』とそれら諸伝本が伝える物語の内容の間には内容の食い違いがあり、その材源を梵漢四伝本いずれの祖形にも求めることはできない。残る二つの物語についてはチベット僧ターラナータが1608年に著した史書の中に並行話がある。彼はアショーカ王伝説の叙述にあたり用いた資料として『アヴァダーナ・カルパラター』及び『チャイトヤ・アヴァダーナ』の名を挙げる。従って(1)ターラナータが『アヴァダーナ・カルパラター』第69章をもとに問題の二話を著した、(2) 『アヴァダーナ・カルパラター』第69章、ターラナータの史書に伝わる問題の二話は散逸した『チャイトヤ・アヴァダーナ』に基づくという二つの可能性が考えられる。しかしターラナータの史書所収の物語には、前者に基づいて説明できない内容の食い違いが三箇所存在する。この事実に照らし後者の可能性が高いと考えられる。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)