2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間接着構造の極性形成を開始させる新規タンパク質相互作用の構造生物学的研究
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13J10057
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
柴原 豪了 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞接着タンパク質 / X線結晶構造解析法 |
Research Abstract |
本年度は、α-cateninの D1 ドメイン単独での結晶化スクリーニングを実施した。その結果、α-cateninの単体結晶を得ることができ、結晶化条件の精密化とクライオ条件の検討を行い、X線回折実験による分解能2.5Åでの回折データを取得した。分子置換法による位相決定を行い、α-cateninの D1 ドメイン単独での三次元構造をX線結晶構造解析法で決定した。結晶構造の決定により、三次元構造に基づいて調製した変異体を用いてin vitroならびにin vivoにおける機能解析を行うことができるようになった。 これまでに、α-cateninにはモノマーとダイマーの会合状態が存在することが知られており、それぞれの会合状態で機能が異なることが示唆されている。モノマー状態のα-cateninはβ-catenin-cadherinと相互作用して、リンカータンパク質(vinculin、EPLIN、α-actinin、l-afadin、ZO-1等)を介してアクチンと相互作用すると考えられている。ダイマー状態のα-cateninはアクチンと直接相互作用して、アクチンのバンドル化を促進するとともにArp2/3やWASpを介したアクチンの枝分かれや重合を阻害すると考えられている。このように、会合状態での役割の違いが示唆されているにも関わらず、会合状態の平衡を制御する分子機構は詳細に理解されていなかった。結晶構造に基づいて調製した変異体による生化学的・生物物理学的な実験により, 我々はα-cateninの会合状態に重量なアミノ酸残基を特定して、どのような構造変化を伴ってα-cateninがホモ二量体またはβ-cateninとのヘテロ二量体を形成するのかについても議論できるデータを得ている。現在は、そのデータをProtein Data Bankに登録して、論文として発表する準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするタンパク質の1つであるα-cateninの単体構造を原子レベルで解明した。変異体を用いた生化学的・生物物理学的実験からも、構造機能相関における興味深いデータを取得している。また、目的とするタンパク質複合体についても結晶を得ることができており、現在は良質なX線回折データを得るために研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
α-cateninの単体構造はタンパク質や核酸の立体構造を管理・保存している国際的なデータベースであるProteir Data Bankに登録を行い、これまでに収集したデータは論文として発表するために準備を進めている。 目的とするタンパク質複合体については、相互作用領域を特定することができた。また、相互作用が確認できた領域について結晶化スクリーニングを行った結果、複合体のタンパク質結晶を得ることができた。X線回折実験により、これまでに分解能6Åの回折データを取得している。今後は分解能を改善するために、結晶化条件の精密化とクライオ条件の検討を行う。分解能の改善が難航する場合、相互作用が確認できている異なる領域についても結晶化スクリーニングを試みる予定である。
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