2014 Fiscal Year Annual Research Report
問題の定義をめぐる対立・連携ネットワークに関する構築主義的研究-外来魚問題から-
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13J10103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 研二郎 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境運動 / 問題定義 / 構築主義 / 連携形成 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用2年度目は、次の3点で成果が上がった。 第1に、運動組織の連携(coalition)に関する先行研究についてレビューし、その成果を論文として発表した。当論文は、欧米の社会運動論で提起された連携形成の先駆的モデルを再構築しながら、連携研究の今後の課題について明らかにした。この再構築したモデルは、自身の事例研究でも今後主要な分析枠組となるものである。 第2に、外来魚問題の事例研究について、関係団体の主張、その中での問題定義を明らかにすることを主な目的とし、1990年代後半から2000年代半ばまでの社会的論争の展開について調査・分析を行った。調査の面では、前年度に特定したナショナルレベルの4者のアクター(漁業者団体:1、環境市民団体:1、遊漁者団体:1、学会:1)を中心に、引き続き資料収集、聞き取りを実施した。分析の面では、漁業者団体が、論争後期に外来魚を一部利用する現状について不適当と位置づける状況の再定義を積極的に主張するようになっていった過程を検討した。中でも、後期に環境市民団体、学会とネットワークを形成し、かつそれらと生物多様性を論拠とした問題定義を共用することによって、漁業者団体が前期から有する一部利用への否定的認識が強化され、結果的に上記の状況の再定義が導かれたという問題化過程を抽出することができた。これらの成果についても論文を執筆し、学会誌に投稿した。 第3に、外来魚問題もその一つに含む生物多様性政策をめぐる国内環境市民団体の組織間関係に関する調査・分析を行い、その成果を論文として発表した。特に、2010年の生物多様性条約第10回締約国会議に関与した市民団体を対象に、資料収集と聞き取り調査を実施した。また、そのデータを元に、締約国会議以降結成されたネットワーク組織への参加に注目し、長期連携の形成条件に関する分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用2年度目の研究実施計画として挙げた、それぞれの団体の問題の定義・主張の違い、及びそれらの相互作用の中での変化を描き出すことを主な目的とし、関係団体での資料収集、インタビュー調査を行うこと、また上記の問題定義上での変化と、前年度に得られた組織間ネットワーク構造の変化との関係について、分析を行うことを達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
採用3年度目は、2000年代半ば以降の展開についての調査・分析を実施するとともに、これまでの研究成果をまとめていく作業に入る。その際、新たにデータが必要になると考えられるため、追加的に資料収集、インタビュー調査を行う。得られた知見については、学会発表、論文投稿をする。
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Research Products
(7 results)