2013 Fiscal Year Annual Research Report
労働力の異質性を導入したセグリゲーションのパターン分析
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13J10130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 万理子 東京大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セグリグーション / エスニシティ / 言語政策 |
Research Abstract |
1、本年度はまず、一地域内(一都市内)におけるエスニシティの違いに応じたセグリグージョン(居住の住み分け)の発生メカニズムを、経済学理論的観点から示した。また、均衡において実現されうる理論上の居住パターンが、現実に散見される居住パターンの事例に対して適合性が高いという結果を導いた。 2、また、複数地域間(二地域間)におけるエスニシティ・言語の違いによって、地域的なセグリゲーションが均衡上で発生することも理論的に示した。これに関しても、現実に適合する事例と理論の適合性が高く、説明力があるといえる。 3、上記1の研究においては、均衡によって達成されるセグリグージョンのパターンと社会的厚生を最大化するような居住パターンの比較をすることが、モデルとして採用した効用関数の形状からは不可能であった。しかし、上記2の研究においては、居住均衡パターンの社会的最適居住パターンの比較を行うことができた。 4、その結果、均衡におけるセグリグージョンのパターンと社会的最適パターンは必ずしも一致しないということがわかった。つまり、政府や地方自治体等による介入によって、各経済主体が獲得する効用水準が改善される可能性があることが示唆された。 5、具体的な政策としては、各地方自治体の言語政策が挙げられる。たとえば、各エリアの地域公用語の採用に関して、パーソナリティ・プリンシプル(フィンランド型)ないしはテリトリアル・プリンシプル(スイス・ベルギー型)の選択肢がある。それらを適宜採用することで、社会的に最適な地域間居住分布を達成することを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、エスニシティによるセグリグージョンの発生メカニズムを理論上は示すことができ、また現実の事例とも対応付けられたため。それに加えて、均衡とは必ずしも一致しない社会的最適居生分布を達成するための具体的な政策を提案できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までは、経済理論上で、エスニシティごとのセグリグージョンの発生に関して分析を進めたが、今後は実証の観点からの分析に移行し、空間計量的な手法を用いた研究を行う予定である。また、初年度はセグリグージョンの発生メカニズム自体に研究の重きを置いていたが、今後はエスニシティごとにセグリゲートしている状態を所与として、そのセグジゲーションの度合いが経済活動・教育水準等に与える影響に関して定量的な分析をすることを試みる。さらに、社会厚生の観点から適切な政策を提案することも視野に入れる。
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Research Products
(3 results)