2013 Fiscal Year Annual Research Report
無機酸化物ナノシートを異方配向した自励振動ゲルの創成
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13J10166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 娟秀 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 無機酸化物のナノシート / N-イソプロピルアクリルアミード / 温度応答性ヒドロゲル / 異方性 / 磁場配向 |
Research Abstract |
N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)のポリマーよりなるヒドロゲルは、基礎科学・応用科学の両面において最も注目されるソフトマテリアルの一つである。外部環境に応じて可逆的に膨潤・収縮するユニークな体積相転移挙動が興味を集め、古くから盛んに研究されてきた。通常のNIPAMヒドロゲルは、32℃より高温側で収縮、低温側で膨潤するが、今回我々は、ある一方向において「加熱時に膨潤、冷却時に収縮」する極めて特異なNIPAMヒドロゲルを開発した。 我々は、最近、無機酸化物の層状結晶を単層剥離したナノシート(幅~μm、厚み0.75 nm)を内包したヒドロゲルについて、構造や機能を研究している。この研究の中途、酸化チタンナノシー卜の分散液に外部磁場を印加することにより、ナノシートが磁力線に対して一義的に垂直配向することを偶然見いだした。酸化チタンナノシー卜の分散液にNIPAMおよび架橋剤を溶解し、磁場印加下にてこれらのアクリルモノマーを系内重合すると、系全体がゲル化する結果、ナノシー卜の具方的配向は磁場解除の後にも保存される。高度な構造的秩序を反映し、ナノシー卜含量はごくわずか(0.4-1.6%)であるにもかかわらず、このヒドロゲルは著しい光学的異方性を示す。こうして得られたヒドロゲルの体積相転移挙動を調べたところ、加熱(32℃より高温へ)の初期段階において、ヒドロゲルはナノシート平面に対し平行方向に収縮するとともに、垂直方向には膨潤することが明らかとなった。異方的に変形したヒドロゲルを冷却(32℃Cより低温へ)すると、ヒドロゲルは元の形状を回復し、この過程は可逆的に何度でも繰り返すことができる。詳細な検討の結果、酸化チタンナノシー卜に高密度に存在する負電荷間の静電的反発が、この現象の鍵となっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
登録者は、研究計画に記載したプロジェクトの準備をしている際に、計画段階では全く想定していなかった興味深い現象を見いだした。N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)のポリマーよりなる温度応答性ヒドロゲルは、この20年間で最も盛んに研究されてきたソフトマテリアルであるが、このヒドロゲルを加熱すれば、等方的に収縮するというのがこの分野の常識である。しかしながら、異方的に配向した無機ナノシートを内包したヒドロゲルを新たに開発したところ、加熱により一方向に大きく伸長することを見いだした。温度応答性ヒドロゲルの歴史に新たな1ページを加える研究になることは間違いない。登録者の精力的な研究によりメカニズムも解明されつつあり、現在、論文執筆の最終段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「自らのリズムで化学エネルギーを力学エネルギーに変換し、一方向に動き続ける自励振動システム」の構築に挑戦する。すなわち(i)環境応答して膨潤収縮するポリN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、(ii)化学振動を示すBelousov-Zhabotinsky反応系(BZ反応系)、(iii)一義配向した無機酸化物ナノシートの三者を複合化したゲルを開発し、その自励振動挙動を調べる。ナノシー卜の配向により、ゲル中を伝播する化学波の方向や速度, あるいは異方性を持つ体積の変化などを制御することを当面の目標としている。
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Research Products
(2 results)