2013 Fiscal Year Annual Research Report
光磁性スイッチング錯体における超高速スピンダイナミクスの観測
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13J10196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅原 彰文 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光誘起相転移 / フェムト秒分光 / ファラデー回転 / 光磁性 / シアノ架橋金属錯体 / 光スイッチング材料 / 金属半導体転移 / 金属酸化物 |
Research Abstract |
本研究は, 光スイッチング物質であるRbMnFeシアノ錯体の相転移初期ダイナミクスを理解することを目的として研究を行った. この物質は光照射によって特徴的な可逆的相転移を示すことで知られているが, その相転移は電荷・格子・スピン系が相互作用しながら生じる複雑な現象であるため, その機構を理解するためにはそれぞれの超高速過程を独立に調べる必要があった. 本研究では, これまで明らかでなかったスピン系ダイナミクスに関する情報を選択的に取得するために時間分解ファラデー回転測定を遂行した. 測定の結果, スピンは光励起による電荷移動に追随して, ほぼ瞬間的に外部磁場方向に整列することが示唆された. さらに可視光プローブ過渡吸収測定を遂行した結果, 電子・スピン系の瞬時応答に対して90ps程度遅れて格子変形が起こることが示唆された. 以上の結果を総合的に勘案することで, RbMnFeシアノ錯体の相転移初期ダイナミクスの描像について一定の理解を得ることができた. 研究の後半では, 光スイッチング物質として, 最近開発されたラムダ型五酸化三チタンナノ粒子における半導体-金属相転移に新たに注目した. この系については未だダイナミクスの研究はほとんどなされていなかったが, 時間分解の拡散反射分光やテラヘルツ分光を駆使して研究を進めることで, ナノ粒子特有のキャリア局在性や, フェムト秒からマイクロ秒に至る時間スケールの相転移ダイナミクスなどについて初めて知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解ファラデー回転測定を遂行し, RbMnFeシアノ錯体の光誘起相転移におけるスピン系ダイナミクスについて, 当初の予定通り一定の理解を得た. また, 光スイッチング物質としてラムダ型五酸化三チタンナノ粒子における半導体-金属相転移に新たに注目し, ナノ粒子特有のキャリア局在性や, フェムト秒からマイクロ秒に至る時間スケールの相転移過程などについて知見を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
RbMnFeシアノ錯体のスピン系を含めた相転移初期ダイナミクスについては, 当初の予定通り一定の理解が得られた. そのため今後は, 同じく光スイッチング物質であるラムダ型五酸化三チタンナノ粒子における半導体-金属相転移のダイナミクスを解明するための研究を進めることを予定している. 具体的には, 時間分解拡散反射分光やテラヘルツ分光を遂行し, 双方向の相転移過程におけるキャリアダイナミクスや相転移の時間スケールについてより詳細に調べていく.
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Research Products
(6 results)