2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J10227
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹澤 浩気 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ホスト-ゲスト / 分子認識 / 加水分解反応 / クロミズム / 歪み / ペプチド / 環化反応 / 自己組織化 |
Research Abstract |
歪みを持った分子は、通常の分子とは全く異なる反応性や物性を示す。さらに、タンパク質の自己分解など、いくつかの生体反応で、反応部位における歪みが反応を促進していることが近年明らかになった。しかし一方で、人工系で反応性の向上に十分なだけの歪みを生み出すためには共有結合的に分子を縛る必要がある。本研究では、これまで共有結合的な化学修飾により行われてきた歪み誘起反応を、非共有結合的な分子間相互作用を用いて実現し、全く新しい機構で基質の活性化を行う触媒系の開発を目指す。 平成25年度では、交付申請書の研究実施計画に記載した通り、二重結合への歪み誘起による求核反応の促進について検討を行った。結果、フェノールフタレイン誘導体において目的の反応が速やかに進行することがわかった。また、アミド結合への歪み誘起による加水分解促進について、標的分子となる直鎖ペプチドの合成および中空錯体への包接の検討を行った。 フェノールフタレインおよびテトラクロロフェノールフタレインは、塩基性において赤色または紫色を示す。この有色種は中央に二重結合をもつキノン型であることがわかっている。これらの基質を正八面体型の中空錯体に包接させると、速やかに二重結合部位で分子内環化反応が進行し、無色に変化した。中空錯体内でキノン型構造に歪みが加わり、より歪みの少ない無色の環化体への変化が促されたと考えられる。人工系ホスト化合物においてこのような構造制御を行なった例は他にほとんど見られない。 また、アミド加水分解の標的分子として、両端に広い芳香環部位(ピレン、トリフェニレン)をもつジペプチドを、縮合反応により高収率で得る事ができた。これらの基質は、箱型中空錯体に効率的に折りたたまれた状態で包接された。今後は包接状態での反応性に関して詳しく調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、申請書に記載した計画どおりの進行度で研究を行うことができている。次の研究標的に取り組むための準備実験にも成功しており、計画から大きな遅れはない。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペプチド分解反応に対して、様々な条件を検討し、包接状態、非包接状態における反応性の差を明らかにする。ただし、現在用いている中空錯体は、反応条件に対する汎用性が小さいため、他のより安定な錯体を用いて実験を行う必要がある可能性がある。その場合には、新規錯体の合成を行い、より広範の反応条件について検討を行う。 さらに、様々な基質に対し本手法を適用し、その適応範囲を調べる。また、触媒系への応用について検討する。
|
Research Products
(6 results)