2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J10238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
綱川 歩美 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 藩校 / 闇斎学 / 儒学 / 神道 / 書物 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究準備期間を経て再開した今年度も、引き続き各地に点在する史料の調査を集中的に行った。調査先は、①名古屋市立鶴舞中央図書館②名古屋市蓬左文庫③京都歴史資料館④下御霊神社⑤静岡県歴史文化情報センター⑥磐田市歴史文書館⑦福井県立文書館⑧新発田市立図書館⑨愛媛県立図書館である。 調査対象の史料は、藩校の儒者や神職、藩士や幕臣らの武士層の著述や関連文書である。研究計画に記した、b)「闇斎学」の担い手たちの思想形成を分析するための材料としての位置づけである。具体的に挙げると、①②では尾張東照宮の神職吉見幸和関連の史料を、③④では下御霊社の神職・出雲路家の日記や闇斎門人間で取り交わされた書状を調査した。また⑤⑥では幕臣跡部良顕の著作や知行支配に関連する文書を発見した。⑦では小浜藩の儒者山口風簷、管山らの書状類を、⑧では新発田藩の藩版に関する文書を調査した。そして⑨では幕末期の儒者・三上是庵に関する講義録や著述を閲覧・調査した。これらの史料の解読に着手し、「闇斎学」の享受者の思想傾向の分析を進めているところである。 また、もう一つの課題a)藩校の基礎構造分析については、主に『明倫堂記録』(石川正雄編、1983年)を用いて、高鍋藩の藩校運営の諸相に着目した。藩校設立を取り上げる研究は多いが、思想受容の展開を見るためには、藩校経費の変遷や藩学の展開など、藩校継続のためのシステムを明らかにすることが重要である。そのため、文政12年から嘉永4年までの藩校記録を分析して論稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
史料調査の件数と内容については予想していた程度に収穫があり、かなりの成果を得られたと思っている。特に当所予定していなかった調査先である磐田市の歴史文書館において、管見の限り知られていない史料(竹下立庵『水神社記』)を発掘できたのは大きな成果であった。 研究初年度に着手していた、高鍋藩の儒者・千手廉斎の思想形成と闇斎学の関係を紙面において発表できたことも本研究の成果として記録できる。 しかし、出産・育児による生活変化への適応と、その上での研究生活の調整に時間がかかり、調査日程そのものが年度の後半にずれ込んでしまった。そのため調査を踏まえた分析・研究そのものが遅延していることは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、これまでの調査によって蓄積された史料データをもとに、研究成果の報告(口頭・紙面)に努め、研究のまとめの年としたい。とりわけ、これまでの調査によって収集した多くの史料データの翻字を早急にすすめ、それにもとづく分析によって成果発表へつなげるつもりである。 また史料調査で得られた新たな史料をもとに、すでに提出している博士論文に新稿を加え出版の目処をつけたい。本研究の当初には想定していなかったが、一連の調査を踏まえた成果を十全に利用するためにも着手し実現したい。 上記のような成果報告が中心となるが、研究報告の準備あるいは論文執筆にあたって、必要な範囲で追加の調査を行い成果の充実を目指したいと考えている。
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Research Products
(1 results)