2013 Fiscal Year Annual Research Report
高効率太陽電池のための新規多元系材料の単結晶成長と基礎物性の解析
Project/Area Number |
13J10330
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
永岡 章 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 化合物太陽電池 / ケステライト化合物 / 単結晶成長 / 溶液成長 / ホッピング伝導 / ホール効果測定 |
Research Abstract |
太陽電池開発において特に重要である低コスト・低毒素・高効率を達成し得る可能性を持つ新規材料である化合物半導体Cu_2ZnSnS_4(CZTS)、Cu_(2) ZnSnS_4(CZTSe)、Cu_2ZnSn(S, Se)_4(CZTSSe)は、世界中で太陽電池デバイス応用として活発に研究されており、注目度の高い材料である。しかしながら、薄膜太陽電池への応用研究が先行しており、基礎研究であるバルク単結晶成長や基礎物性評価の報告は非常に少ない現状である。基礎研究が少ない原因として、これらの材料は融液からの冷却過程において複雑な相転移を示すため、一般的な融液成長からの単結晶成長が非常に困難であるからである。本研究では、CZTS系単結晶成長確立と単結晶を用いた基礎物性評価という基礎研究に注目し、まだまだ未知な物性を明らかにすることにより、更なる太陽電池高効率化への知見を提供する。 本年度における研究計画はCZTSe単結晶成長の確立とCZTS単結晶の基礎物性評価である。すでに確立しているCZTS単結晶成長をもとに構成元素であるSnを溶媒に用い、CZTSe-Sn擬二元系状態図を実験的に作製し、単結晶成長可能な条件を見出した。作製したCZTSe単結晶は、様々な評価を行い、異相が無く結晶性の良い単結晶であった。結晶成長については予定を上回る早さで計画を達成したため、現在は混晶であるCZTSSe単結晶成長へ視野を向けている。今後は、得られたCZTSSe種多結晶を用いてSn溶媒から単結晶成長へと繋げる。すでに得られている高品質なCZTS単結晶を用いて、ホール効果温度変化測定から電気的特性である伝導メカニズム、キャリアの活性化エネルギー等の解明を行った。その結果、CZTSは化学量論組成においても固有点欠陥の多い材料であり、この多数存在する点欠陥間をキャリアが移動するホッピング伝導が支配的であることを突き止めた。これらの電気特性の知見は、直接的に太陽電池の変換効率向上への足がかりになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
結晶成長面においてはすでに確立しているCZTS単結晶成長技術を用い、CZTSeとSn溶媒の擬二元系状態図を作製し、最適な結晶成長条件を見出すことからCZTSe単結晶を得ることに成功した。次のステップであるCZTSSe単結晶成長へ向けてすでに研究をスタートさせている。CZTSの電気的評価を計画通り行い、良質な単結晶であっても多数の固有点欠陥を持つことを明らかにし、低温において一般的なバンド伝導ではなく、固有点欠陥によるホッピング伝導が支配的であることを突き止めた。更に報告のない熱物性評価も行い、重要物性値であるデバイ温度を実験的に明らかにした。以上のことから当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は蒸気圧の異なるSとSeの混晶であるCZTSSe単結晶成長を計画している。問題点としてS/Se比の組成制御が問題になることが予想される。特に結晶成長途中で不足する可能性がある蒸気圧の高いSを事前に過剰に封入する方法、もしくは事前に溶媒に溶かす方法が検討される。また5元系システムとなることで、より異相が形成されやすい状況下で、最適な結晶成長条件を求めるためを調査するためCZTSSe-Sn擬二元系状態図を作製する。CZTSSe電気的特性評価においてオーミック特性を持つ金属電極を選択する必要があるが、すでにCZTSにおいて金電極によりオーミックが取れているので、そのまま応用する。
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Research Products
(15 results)