2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J10342
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今井 宏平 明治大学, 研究・知財戦略機構, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | トルコ / 公正発展党 / 全方位外交 / ダーヴトオール |
Research Abstract |
本研究の目的は、2002年から現在(2014年5月)までトルコで単独与党の座に就いている公正発展党の外交政策の解明である。とりわけ、公正発展党の外交政策において特徴的な全方位外交の実態解明に焦点を当てる。公正発展党の全方位外交の実態をより良く理解するためには、特定の地域に対する諸政策だけではなく、より水平的・垂直的な視野を導入し、体系的な説明を試みる必要がある。水平的な視野とは、トルコと他国の関係だけではなく非政府組織との関係も視野に入れ、トルコをハブとする経済、文化、宗教的な共同空間をあぶり出すことである。垂直的な視野とは、公正発展党の全方位外交とトルコの史的に展開された全方位外交との比較、現代外交の分析に欠如している歴史研究の成果を導入することである。 この目的に沿って平成25年度は、主に全方位外交の理論的な検証、トルコと周辺国の政府間関係、トルコの非政府アクターの行動について検証を行った。全方位外交の理論的な検証に関しては、2013年6月に"Comparative studies of Turkish omnidirectional diplomacies"という題で学会発表を行った。トルコと周辺国の政府関係、トルコの非政府アクターについては「接近するトルコとアメリカ-トルコのフロッキングとアメリカのオフショア・バランシング-」、「中東地域におけるトルコの仲介政策-シリア・イスラエルの間接協議とイランの核開発問題を事例として-」という論文を発表した。 本研究は近年新興国として、また、イスラームと民主主義の両立のモデルとして国際社会で存在感を高めているトルコの公正発展党政権の外交の全体像を描き出したうえで、トルコの史的に展開された全方位外交と比較する試みである。現代トルコ外交の研究は日本ではほとんど蓄積がないだけでなく、社会科学的な検証はほとんど行われてこなかった。本研究はこうした日本の現代トルコ外交の空白を埋める研究であり、その学問的意義と重要性は高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には文献調査、フィールド調査、資料収集、という3つの活動を中心に研究を実施した。また、その成果を国内外の学会または研究会で発表した。資料収集、フィールド調査、学会発表を兼ねて2度、10日ずつトルコのアンカラおよびイスタンブルを訪問した。文献調査に必要な資料は一部を除きほぼ収集することができた。フィールド調査に関しては、トルコで政府関係者、有識者に中心にインタビューすることができた。研究論文も何本か執筆することができたので、研究に関して、現在まではおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は文献調査、フィールド調査、資料収集を中心に研究を実施した。昨年度は全方位外交の理論面を中心に研究に取り組んだので、今年度はトルコの全方位外交の具体的な事例、特に政府と非政府組織が連携して展開した他国への諸政策について検証する。この成果を6月にイギリス中東学会、7月にアジア・オーストラリア学会、8月にトルコで開催される世界中東学会でトルコの全方位外交の一環であるイランに対する外交、非政府レベルでのアルメニアとの歴史問題解決の取組、冷戦後におけるトルコの難民政策、について学会発表を行う。また、12月のアジア中東学会では2年間の総括としてトルコの全方位外交の水平的な側面についての発表を予定している。加えて、夏もしくは冬にトルコでシンクタンクや経済団体に対するフィールド調査を実施する予定である。
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Research Products
(7 results)