2013 Fiscal Year Annual Research Report
LCGTにおける光共振器の輻射圧不安定性とその制御に関する研究
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13J10386
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
道村 唯太 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 重力波 / レーザー干渉計 / 精密計測 / 光共振器 / 量子計測 / 干渉計シミュレーション / ショットノイズ / 多自由度制御 |
Research Abstract |
大型低温重力波望遠鏡KAGRA(旧名LCGT)は、マイケルソン干渉計に4つの光共振器を追加した複合光共振器である。これを高感度な重力波検出器として用いるためには、複雑に配置された鏡の位置と姿勢の高精度な制御が必要となる。また、光共振器の中に最大400kWものレーザー光が往復するため、光共振器を構成する鏡の傾きに対して、光輻射圧によって角度不安定性が自発的に生じてしまうという問題がある。そこで、構成する鏡の位置と姿勢の制御方法をレーザー干渉計のシミュレーションとテーブルトップ実験による実証で確立しなければならない。 2013年度は干渉計シミュレーションを進めるとともに、テーブトップ実証実験の準備を行った。 干渉計シミュレーションでは、今年度は鏡の姿勢制御に用いるwave-front sensor (WFS)法の原理的な雑音であるショットノイズに着目し、その要求値の計算を行った。また、干渉計シミュレーションにより、重力波に対する感度を悪化させない姿勢信号の取得方法や分離方法を検討した。これにより15Hz以上の周波数帯域では、要求値を満たす方法を見出すことができた。この成果は共著論文Phys. Rev. D88, 043007 (2013)の第7節にまとめた。15Hz以下の低周波帯域では制御によってショットノイズが混入してしまうが、地面振動による雑音によってそもそも干渉計の重力波に対する感度は低いため、連星中性子星合体の観測可能距離(inspiral range)の減少量は1Mpc程度と小さい。 また、テーブルトップ実験の準備として、微小鏡の製作検討と、真空装置や光学系の組み立てと試験を行った。実験に用いる微小鏡は、直径が3mm程度であり、かつ反射面に曲率がついたものである必要があり、その製作は困難を極める。製作会社と複数回の打ち合わせを行い、製作可能性の検討を進め、発注の目処をつけた。さらに、鏡の支持方法について、これまではワイヤによる懸架を計画していたが、光輻射圧の影響をより大きくするため、ワイヤを用いず支持ができる光学浮上の方法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は干渉計シミュレーションによる制御方法の検討を終了させ、2014年度に向けてテーブルトップ実験の準備を進めるのが当初の計画であった。干渉計シミュレーションに関しては共著論文Phys. Rev. D88, 043007 (2013)の第7節にまとめたようにほぼ完了した。また、テーブルトップ実験のための装置はほぼ組み立て終わったので、おおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は真空装置の中に光学系を組み込み、また微小鏡を光学浮上によって支持することでテーブルトップ実験により制御方法の実証を行う。さらに、実際にKAGRAにこの制御方法を技術導入する。KAGRAのスケジュールが当初の計画より変更されたため、2014年度中に主干渉計部分には導入できない可能性があるが、モードクリーナーと呼ばれる入射部分の光共振器には導入することができる予定である。
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Research Products
(10 results)