2014 Fiscal Year Annual Research Report
IRF3によるIL-33遺伝子発現誘導の腸炎における役割
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13J10423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三木 祥治 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IL-33 / TSLP / 腸炎 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は申請当初から平成25年度までの検討で、予定していた多くの検討結果が得られ、かつ、当初の推測よりも興味深いIRF3の重要性が明らかとなった。そのため当初の予定していた計画の繰り上げおよび変更を行い、さらに研究を推進している。すなわち腸炎抑制に関与するサイトカインIL-33、TSLPの腸における産生機構が、生理的条件下ではどのような機構で引き起こされているかについて解明するため、その引き金となる刺激物を明らかにすることを目的に実験を行った。 その結果、腸管における刺激物として腸内細菌がメインであること、また糞懸濁液の刺激性が好気的条件下の培養によって増強されることを明らかにし、そのような刺激性を持つ好気性または通気性嫌気性腸内細菌の探索を行った。そして刺激性を担う腸内細菌の単離に至り、さらにその性質が腸外で不安定であることも明らかにした。このような腸内細菌の刺激性を変化させる因子として腸内細菌に感染する事の知られるバクテリオファージの関与を予想し、実際に入手可能ないくつかの細菌とその細菌に感染可能なバクテリオファージの組み合わせを用い、これらが混在する事で幾つかの遺伝子誘導が著明に強くなることを明らかにした。さらに入手可能な細菌とバクテリオファージの組み合わせだけでなく、生理的条件下での現象を明らかにする為、マウス腸管から常在性のバクテリオファージとその宿主となる常在性腸内細菌の単離を行い、実際に1組の組み合わせの単離に成功した。 このような結果から申請当初から平成26年度までの検討で得られた検討結果を元に、腸管の常在性のバクテリオファージがその宿主である常在性細菌と引き起こす免疫応答についてとさらに研究を推進する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は申請当初予定していた検討の多くが完了しているだけではなく、IL-33およびTSLPの高発現を誘導する腸内細菌の同定、解析を進める中で、腸内細菌だけでなく、バクテリオファージの関与を示唆するような新しい知見が得られている。 また、入手可能ないくつかの細菌とその細菌に感染可能なバクテリオファージの組み合わせを用い、バクテリオファージが細菌の刺激性を高める可能性について検討した結果、細菌、バクテリオファージ単独刺激による遺伝子誘導と比較し、これらが混在した際の遺伝子誘導が著明に強いことが分かった。バクテリオファージが宿主の免疫系に直接作用する可能性は想定されているものの、それを実際に示した例は初めてであり、非常に興味深い結果である。 さらにマウス腸管から常在性のバクテリオファージとその宿主となる常在性の腸内細菌を単離に成功した。今まで腸内に常在するバクテリオファージの生理的な重要性は解析されていないだけでなく、そのような解析を可能にする特定の細菌、バクテリオファージのペアすら単離されてはいなかった。本課題はバクテリオファージが免疫応答に与える影響を世界で初めて検証するものであり、その結果によっては、腸内の常在菌の研究が大きく発展を遂げた昨今で、さらなるブレイクスルーとなる可能性をもつ非常に興味深い研究であると考えている。 その為、当初の予定以上の研究成果が得られたことから、(1)当初の計画以上に進展している、の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討として、腸管から単離されたバクテリオファージとその宿主である常在性の腸内細菌によって引き起こされる免疫応答の解析を行う。指標としては、マクロファージのセルラインであるRaw cellや腹腔マクロファージ、樹状細胞等を用い、IL-33やTSLPをはじめ腸炎抑制に関与する事の知られるサイトカインの遺伝子発現誘導をqRTPCR法により解析する。 またin vivoの検討を行う為、今回単離したバクテリオファージや細菌を持たない野生型マウスが存在しないか、複数のマウス施設の野生型マウスの糞便を用い、plaque assayとコロニーPCR法によりそれらの有無を検討する。もしそのようなマウスが存在した場合、そのマウスに今回単離したバクテリオファージや細菌を投与し、腸内での遺伝子誘導、DSS誘導性腸炎に対する表現型を解析する。また、そのようなマウスが存在しない場合、Germ Freeマウスに今回単離した細菌とバクテリオファージの組み合わせ、もしくは細菌のみを投与し、解析を行う。 また本研究内容について、今年度中に論文投稿を行う予定である。
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