2014 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物中化石DNAによる古海洋物質循環システムの変遷解明
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13J10453
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 保彦 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋堆積物 / 化石DNA / 海洋炭素循環 / バイオマーカー / アミノ酸 / 窒素同位体組成 / 海洋窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.大陸縁辺域の堆積物中における化石DNAの分解・変質に、堆積物の酸化還元状態が与える影響を評価するために、日本海の表層堆積物コアを7地点で採取した。まず間隙水中の溶存化学成分やガス成分を分析し、堆積物の酸化還元状態を調べた。次に各地点の堆積物試料について堆積物深度ごとにDNAを抽出し、18S rRNA遺伝子(真核生物の指標)や16S rRNA遺伝子(原核生物の指標)などの濃度を、定量PCR法によってそれぞれ分析した。その結果、堆積物の酸化還元状態に対応して、DNA量が変化していることを見出した。 2.遠洋域の海洋表層から深層にかけての有機物やDNAの分解・変質を評価するために、夏季の北太平洋ハワイ沖で、様々な水深から海洋有機物試料(セディメントトラップ、懸濁態有機物、高分子溶存態有機物、低分子溶存態有機物など)を新たに採取した。C/N比や炭素・窒素安定同位体組成など、基礎的な有機物分析を行った。 3.アミノ酸窒素同位体組成など、海洋有機物の分解・変質の度合いを評価するための有機地球化学的指標について、高速液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィー同位体比質量分析計を組み合わせた分析法の改良を進めた。遠洋域(北太平洋ハワイ沖)および沿岸湧昇域(米国カリフォルニア沖)で採取された懸濁態有機物や溶存態有機物に、その手法を適用し、海洋の有機物や窒素の生物地球化学的動態について新たな制約を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.日本海表層堆積物試料について、DNAおよび酸化還元指標を分析することで、堆積物の酸化還元状態がDNAの分解に与える影響について、知見を得ることができた。 2.アミノ酸窒素同位体組成など、海洋有機物の分解・変質の度合いを評価するための有機地球化学的指標について、分析法の改良が大きく進展し、遠洋域と沿岸域の海洋有機物試料に初めて適用することができた。 3.DNA配列情報を生物情報学的に解析するための環境を、新たに立ち上げた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.日本海表層堆積物試料について、抽出したDNAから18S rRNA遺伝子と16S rRNA遺伝子をPCR増幅し、次世代シーケンサーを用いてシーケンシングし、生物情報学的に解析することで群集組成を明らかにする。 2.同じ試料について、脂質バイオマーカーや生物源シリカなど、従来の生物指標も分析し、円石藻や珪藻、放散虫など、特定の生物群のDNA量と比較することで、堆積物中での化石DNAの分解について、さらに詳しい知見を得る。 3.日本海や北西太平洋などで採取された、さらに深層の堆積物試料についても、DNAの分析を進めて、古海洋学的な議論を行う。
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Research Products
(2 results)