2013 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境耐性動物クマムシの共生細菌の耐性基盤の解析
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13J10474
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冴 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クマムシ / プロテオミクス / ミトコンドリア |
Research Abstract |
クマムシは周囲の環境が乾燥すると、水分量約3%の無代謝状態になり乾燥に耐える。このような乾燥耐性機構の解明は細胞などの長期保存法の開発に有用と考えられるが、その全貌は明らかではない。そこで私はDNAや生体膜をもつミトコンドリアを耐性モデルとして乾燥関連タンパク質の網羅的な同定をおこなうことにした。クマムシの核ゲノムには耐性に関わると考えられる新規遺伝子が多くコードされているが、ミトコンドリアゲノムには新規遺伝子は見出されなかった。また、乾燥による遺伝子発現誘導も見出されない。このことからミトコンドリアの耐性は核ゲノムコードの常時発現遺伝子が基盤となっていると考えられた。そこでクマムシのトランスクリプトームデータにおいて高発現量のミトコンドリア局在予測遺伝子を選出し、各GFP融合タンパク質の細胞内局在を確認した。これにより、2種の新規クマムシタンパク質がミトコンドリアに局在する性質をもつことが示された。さらに網羅的な耐性タンパク質の探索を行うため、ミトコンドリア分画におけるショットガンプロテオミクスを計画した。まず、分画評価としてWB解析をおこなうために、既存抗体からクマムシの細胞質・ER・ミトコンドリアの抗体を探索した。条件検討によりWB解析においてミトコンドリアに対する抗体におけるバンドのみが検出される分画条件を確立した。これにより、濃縮されたミトコンドリア分画の分離が可能となった。次に、クマムシのミトコンドリアタンパク質を網羅的に同定するために、ミトコンドリア分画とクマムシ破砕液におけるショットガンプロテオミクスをおこなった。クマムシ破砕液とのペプチド検出数の比較により、ミトコンドリア分画に濃縮されたタンパク質を849種類同定した。このうち新規タンパク質は95種類あり、これら新規タンパク質はミトコンドリアの乾燥耐性に関わるタンパク質のよい候補である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
WB解析用の抗体が思うように見つからずに当初の計画より時間がかかったが、ミトコンドリア分画の分離においては他の細胞内コンパートメントの混入が検出されずに解析に必要なタンパク量を得るという分画条件を見出すことが出来た。これにより、共同研究であるショットガンプロテオミクス解析にスムーズに進むことが出来、ミトコンドリアに局在するタンパク質の網羅的な同定まで到達することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はショットガンプロテオミクス解析において見出した新規タンパク質から、実際にミトコンドリアに局在する性質をもつものを選出する。ミトコンドリアに局在することが示された新規タンパク質を複数種類導入した細胞を作出し、高塩濃度や乾燥などのストレスへの曝露に対して耐性を示すかを検証する。また、クマムシのミトコンドリアにおいて亢進または減少している機能についてもプロテオミクスデータから探索する予定である。これにより、乾燥耐性生物のミトコンドリアの再構成をおこない、乾燥耐性の分子基盤の解明を目指す。
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Research Products
(4 results)