2014 Fiscal Year Annual Research Report
メタルフリー型有機ボロン錯体を基盤とする常温燐光物質の創成
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13J10489
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
酒井 敦史 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 常温燐光結晶 / 凝集誘起発光 / 分子間相互作用 / 重原子効果 / メタルフリー材料 / ハロゲン結合 / 水素結合 / 励起マルチマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ハロゲン原子 (塩素,臭素,およびヨウ素) を導入したジアロイルメタナートボロンジフロリド誘導体1a-cBF2を合成し,ハロゲン原子の内部および外部重原子効果により,新規常温燐光材料を創成することを目的としている.平成26年度では,申請書に従って研究を遂行し,以下の二点を達成した. ①ハロゲン原子置換体1a-cBF2の結晶中における分子間相互作用の評価 今年度の目標であった1a-cBF2の結晶構造 (Fig. 1) をX線単結晶構造解析によって得ることができ,それらの分子間相互作用についての評価をおこなった.その結果,顕著な常温燐光を示した1cBF2の結晶構造ではジオキサボリニン環に隣接分子のヨウ素原子が非常に近接しており,さらにフッ素原子と隣接分子の水素原子との間の水素結合だけでなく,フッ素原子と隣接分子のヨウ素原子とのハロゲン結合も形成されていることがわかった. ②ヨウ素原子置換体1cBF2の電子構造の評価 量子化学計算によって,この積層構造を基とする基底状態から,対応する多分子励起錯体への光励起過程は禁制であることが示唆された.これにより1cBF2は結晶中の蛍光放射よりも速い項間交差速度をもつことで効率よく燐光を発するものと考えられる. なお,本研究の成果として,有機ホウ素錯体の発光特性に関する解説文を,「ジアロイルメタナートホウ素二フッ化物で見られる白色フォトルミネッセンス」というタイトルで化学工業誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の課題であった有機ボロン錯体の常温燐光メカニズムの解明を,結晶構造と発光特性の詳細な検討によって達成した。その詳細を日本化学会第95春季年会(2015),第25回基礎有機化学討論会,2014年光化学討論会,第8回有機π電子系シンポジウム,15th International Meeting on Boron Chemistry (IMEboron XV) で発表するに至っている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の課題は,有機ボロン錯体とは異なる骨格を有する常温燐光材料を創成すること,さらにそれらのデータを集積して新しい常温燐光材料の分子設計指針を確立させることである.平成26年度は,申請書の計画通りに,塩素,臭素,およびヨウ素の原子をそれぞれ有する有機ボロン錯体の結晶状態構造ならびにそれぞれの燐光特性を明らかにすることができたため,平成27年度はこれらの知見を基にした有機ホウ素錯体の常温燐光特性に関する論文執筆に加えて、常温燐光材料の酸素センサー等への応用研究にも取り組む予定である.
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Research Products
(20 results)