2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J10510
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
塩山 貴奈 学習院大学, 文学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 『平家物語』 / 重源 / 『発心集』 / 阿波守宗親 / 村上源氏 / 大納言典侍 / 近衛家 |
Research Abstract |
平成25年度は、研究実計画に従って延慶本『平家物語』「阿波守宗親発道心事」にかんする考察に取り組みはじめるとともに、前年度から継続している『平家物語』諸本にみえる「重衡被斬」の考察を行い、この二話に重点を置いた。 阿波守宗親(心戒)にかんする説話は、『発心集』にも収録されている。宗親説話が延慶本『平家物語』に収められるに至るまでの過程を考えるには、宗親説話自体の成立と合わせて、『発心集』の成立にも言及する必要があり、また、「心戒」の言葉や動向を断片的に伝える『一言芳談』の成立事情をも加味してゆくことになる、広がりのある問題でもある。 まず、実在した宗親の足跡や人間関係をとらえなおし、当時の重源周辺とどのようなかかわりがあったのか、先行研究を踏まえながらも再考した。史料から見える宗親や重源周囲の実情と、『発心集』成立の問題や重源の入宋にかんする言説の広まり、また当時における説話のパターンや特定の人物像に対する強烈なイメージ性のありようなどを総合的にとらえてゆくことで、宗親説話は、様々な外的要因を受けて、人物像や話の展開が形作られていった側面が大きいことを論じた。今後は、『発心集』や『一言芳談』の成立事情も研究対象とし、宗親説話の成立と関連付けてゆく。 「重衡被斬」にかんしては、前年度に続き、さらに重衡北の方である大納言典侍の具体的な足跡、人間関係に関連する史料を追っていった。「重衡被斬」の原型ともいうような言説が成立し、流布してゆくその一方で、近衛家と密接な関係のもと、ふつうイメージされる「零落した平家の女人」といった像とは異なる大納言典侍の存在があったこと、また、それは当時の人々にも相当に知られていたであろうことを史料をもとに論じた。そうした状況下にあっても形成されていった『平家物語』の「大納言典侍」とは何者なのか、そうした新たな問題にたどり着くことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計面に従い、ぞれそれの説話の考察を進められたこととあわせ、学会発表や論文投稿なども積極的に行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、歴史学や宗教学の先行研究を踏まえ、文学研究では注目度の高くなかった史料などをもとに考察を進めることが多かった。それにより得られた成果を発表、論文化するなどできたが、平成26年度は、文学テクストそのものへの考察をより重視して行う必要があると感じている。史料を重視し、実証的な考察を進めることは継続しながら、テクスト内部の論理について理解を深め、より多角的な視野を持った研究を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)