2013 Fiscal Year Annual Research Report
STEM-EELS法によるAl基準結晶の局所電子状態観察
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13J10561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 岳人 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 準結晶 / STEM / EELS / 電子状態 |
Research Abstract |
準結晶化合物は経験的に遷移金属の価電子チューニングによる合金設計により発見されてきた。これは準結晶合金の相安定性がフェルミ面とブリルアンゾーンの相互作用によるものであることを強く示唆するが、ほぼ自由な電子の近似による描像がなぜ幅広い系に適用できるのかは, よく理解されていない。本研究ではSTEM-EELS法による局所電子状態観察と第一原理計算を組み合わせて, Al-Cu-Ir正10角形相の電子状態を議諭し, 相の安定化機構を検討した. 2次元領域から取得したプラズモン損失ピークの主成分分析より, ピークは直径2 nmのクラスター中心において低エネルギー側へとおよそ0.2 eVシフトしていることが明らかとなった. 内角励起スペクトルの結果と第一原理計算を組み合わせることによって, クラスター中心が金属結合的でクラスター端が共有結合的であるとして解釈することができた. また第一原理計算の結果から, 準結晶中の混成軌道の大域的な分布が, 波数2k_F (k_F : フェルミ波数)の正弦波を5回対称に重ね合わせたパターンに沿っていることを示唆していた. 通常, 共有結合が議論されるときには局所的な配位環境のみに注目されるが, 共有結合の大域的な配置が重要であることを示唆している. 言い換えると, ヒューム-ロザリー機構の平面波描像においてフェルミ準位に形成される電荷密度波を, 局在基底である混成軌道によって構成することによって電子系のエネルギー利得が発生していると考えられる. 以上, 述べたように, Al-Cu-IrのSTEM-EELS観察と第一原理計算を組み合わせることによって, 従来平面波描像によってのみ解釈されてきたヒューム-ロザリ一則に局在基底による描像を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
EELSスペクトルを定性的に解釈することができ, 準結晶の安定化機構に関して新しい描像を提案し, 研究目的を概ね達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
広いエネルギー領域でのEELS観察が可能な装置が利用可能となったため, 追加でSTEM-EELS観察を行う。また, disorderが存在するために, クラスター構造は明らかでない。そこで, 多変量解析を用いた構造解析を行い, より現実的な構造モデルによる第一原理計算を行う。
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