2013 Fiscal Year Annual Research Report
乳児の寝返り運動における柔軟な全身運動の発達機序の解明
Project/Area Number |
13J10645
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 佳雄 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2015-03-31
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Keywords | 発達 / 乳児 / 寝返り運動 / 運動パターン / 3次元動作解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度は、乳児に装着した複数の反射マーカーから、体幹中心部および四肢について安定したデータ取得率の向上および寝返り運動パターンの定量的な分類手法の確立を行った。25年度の取り組みから、乳児の寝返り運動における四肢の運動順序特性を定量的に捉える事が可能になった。
26年度は、生後5-6ヶ月および8-10ヶ月の乳児を対象に、寝返り運動時の体幹と四肢(寝返りの方向と同側の上肢(Ipsilateral Arm:IA)と下肢(Ipsilateral Leg:IL)、反対側の上肢(Contralateral Arm:CA)と下肢(Contralateral Leg:CL))の運動を3次元動作解析装置で計測し、運動パターンの定量的な分類を行った。分類にあたり、IAおよびILに関して静止肢(寝返り運動中、運動しない身体部位)の同定、遊肢(静止肢以外の自由に運動する身体部位)の同定、および遊肢と体幹の運動のタイミングの同定を行った。 分類の結果、寝返り運動中のIAおよびILの特性について、8-10ヶ月群は5-6ヶ月群よりも遊肢として同定される運動パターンが多く観察された。また、四肢の運動パターンは、5-6ヶ月群、8-10ヶ月群ともにある一定の運動パターンに集約されることが示された。四肢の運動順序のパターンにおいて、両群とも遊肢が同時に運動するパターンが多く観察された。遊肢が非同時に運動するパターンは、寝返りの方向と対側の上肢が先行する運動パターンが優位に観察された。 本研究の寝返り運動の観察を通して、身体をある場所からある場所に移動させるために、乳児がどのように身体を動かすのか、その特性が示された。本研究で得られた全身運動の発達に関する知見は、乳児の運動発達における運動の出現と成熟の機構解明に強く貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、乳児の寝返り運動の特徴を抽出するため、妥当性のある定量的分類手法の確立において十分な検討をおこなった。その結果、寝返り運動時における四肢の運動順序特性および、月齢に伴う発達的変化を捉える事に成功した。しかしながら、定量的分類手法の確立に時間を要したため、個人の縦断的観測の実施にまで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
発達過程で見られる寝返りパターンの多様性の変化が、個人によって異なる過程を示すのか、あるいは普遍的特徴があるのかを明らかにするために、複数の個人の縦断的計測が今後必要である。また、縦断的計測を行っていく過程で、寝返りの床面を物理的に変化させた状況や、声掛けや物など文脈を統制させた状況での寝返りを観察する事で、複雑な環境下で柔軟に適応する乳児の行動の発達過程を理解する事が可能である。 また、ヒトが運動を行う上で、身体と接する接地面は、姿勢を保つ事や、環境内を移動するために必要不可欠な要素である。寝返り運動を行う際、どこを支点にし、身体をある場所からある場所に移動させるのか、また、接地面に加わる力の変化についてその特性を捉える事は、乳児の寝返り運動を理解する上で重要である。今後、寝返り運動中の四肢の動かし方と、接地面に加わる力の変化との関係性についても検討する必要がある。
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Research Products
(3 results)