2013 Fiscal Year Annual Research Report
原核生物型のppGppシグナルが担う植物葉緑体の機能制御機構の解明
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13J10691
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野村 勇太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ppGPP / 葉緑体 |
Research Abstract |
本研究目的は、植物葉緑体におけるバクテリア型ppGppシグナルの機能的役割を分子レベルまで理解することにある。これまでにppGpp標的分子の一つが葉緑体翻訳系であることを筆頭著者論文で報告済みである(Nomura et al. Plant Mbl Biol, 78, 185-196, 2012)。今年度は、新たなppGpp標的分子候補として、葉緑体のGTP生合成に必須のグアニル酸キナーゼ(GIつおよびATP生合成に必須のアデニロコハク酸合成酵素(AdSS)に着目し、各酵素触媒活性に与えるppGppの作用を指標とし、葉緑体の転写制御におけるppGppの機能的役割を考察した。その結果、イネ葉緑体のGKpmの触媒活性はppGppにより顕著に阻害されることが判明した。GKpmに対するppGppの阻害濃度IC_<50>は約10μMであり、葉緑体翻訳系の阻害濃度(250μM)と比べ著しく低い。一方、イネ細胞質のGKcは酵母細胞質GKと同様にppGpp非感受性であった。また、単離したエンドウマメの葉緑体抽出液の解析から、エンドウマメ葉緑体に内在するGKpmの活性がppGppによる顕著な阻害を受けることを確認し、これらの解析結果を基にppGpp主要標的分子がグアニル酸キナーゼであることを筆頭著者論文(J Biol Chem誌)で報告した。また、葉緑体局在型AdSSs (AdSS1,2)の触媒活性もppGpp感受性を示すことを見出したが、詳細な酵素反応速度解析からGTPやGDPでもppGppと同様の強い酵素親和性があると分かった。従って、葉緑体内においてppGppによるAdSSs活性の抑制効果は限定的で、ppGppの主要標的分子とは考えにくいと考察し、筆頭著者論文(Biosci Biotechnol Biochem)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の様に、今年度の当該研究により、これまで未解明であった植物葉緑体のppGpp主要標的がグアニル酸キナーゼであることなどを生化学的に証明し、学術論文雑誌に筆頭著者論文2報を報告した。さらに、学会・シンポジウムでの口頭・ポスター発表により自身の研究成果を発信することができた。以上の通り、研究の大幅な進展があったと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
既に生化学的な機能解析を完了している高等植物のRSH1タンパク質のppGpp分解性について世界に先駆けて学術論文雑誌で報告する予定である。当該酵素は高等植物で初めて示されるppGpp分解酵素であるので非常に重要である。また、今年度の研究により高等植物葉緑体のppGpp主要標的がグアニル酸キナーゼであると判明したため、植物葉緑体内でのppGpp誘導がGTP生合成系等へ与える影響について生理学的に解析を試みる予定である。
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Research Products
(6 results)