2013 Fiscal Year Annual Research Report
3次元立体視空間における数の過大推定現象に関する心理物理学的研究
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13J10777
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
相田 紗織 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 離散量識別 / 3次元知覚 / 両眼視差 / 眼球位置 / 立体透明視 / 恒常法 |
Research Abstract |
本年度、申請者は3次元刺激における数の過大推定現象の特性を実験的に検討、報告した。過大推定現象とは、同じ数の構成要素からなる2次元刺激と3次元刺激(立体透明視刺激)を比較すると、3次元刺激の構成要素数が過大に推定される現象である。2次元刺激とは、左右の眼の同じ網膜位置に構成要素(random dot pattern)を提示したものであり、それぞれの構成要素の両眼視差がゼロの刺激である。融合すると単一の2次元面が観察される。立体透明視刺激とは、複数の両眼視差をもつ、ランダムドットステレオグラム(Random Dot Stereogram、以下RDS)であり、融合すると同一方向に複数の面(たとえば、2面や3面)が知覚される刺激である。 本年度は2つの心理物理学実験を行った。実験1では、過大推定現象を確認するために、構成要素数、立体透明視刺激の面の数を刺激変数として扱った。その結果、左右網膜上の構成要素数は同じであっても、数の推定は構成要素が2次元に提示された場合に比べ3次元に提示された場合のほうが過大視された。つまり、数の過大推定現象が観察された。実験2では、両眼視差、眼球位置の制限の有無を変数として扱った。その結果、過大推定現象は確認され、その過大推定量は眼球運動の効果をもたないことと、両眼視差が増加するにつれて過大推定量が増加することがわかった。実験1と2の結果は、左右網膜上の構成要素数が同じであっても、構成要素が3次元空間に提示された場合、数の推定は2次元空間に比べて過大視されることを示唆する。 本年度は、3次元刺激の特性(面の数、構成要素の数、奥行き量、眼球運動)を制御し、数の過大推定現象が3次元刺激に独特のものであることを確認した。2次元空間のみで行われてきた数知覚に関する従来の研究にない報告であり、日常の数知覚判断における人間の特性を示した研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1)現象(数の過大推定現象)を確認し、2)その基本特性を探り、3)なぜ、現象が生じるかを明らかにすることである。本年度は目的1と2のために実験1と2を行い、3次元刺激の特性(面の数、構成要素の数、奥行き量、眼球運動)を制御し、数の過大推定現象が3次元刺激に独特のものであることを確認した。研究計画に従って研究を進め、今年度の計画を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、なぜ数の過大推定現象が生じるのかについて調べる。当面の仮説は、遮蔽仮説と見かけの大きさ仮説である。遮蔽仮説とは、奥行きを持った複数の対象の数を判断するとき、視覚系は立体透明視刺激の前面が後ろの対象を遮蔽し隠している可能性を斟酌するという仮説である。見かけの大きさ仮説とは、視覚系はより大きいと判断される対象(立体透明視刺激の後面)がより数が多いと判断するという仮説である。これらの仮説を検討するため、立体透明視刺激の前面と後面の提示される構成要素数の違いが過大推定現象に影響するかを調べる。
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Research Products
(8 results)