2014 Fiscal Year Annual Research Report
イトマキヒトデ卵母細胞MI停止解除時のmRNAポリA鎖伸長制御機構
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13J10787
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
越智 洋絵 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | mRNA / ポリA鎖伸長 / ウリジレーション / 卵母細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期発生時、卵母細胞は短いポリA鎖をもつmRNAを安定的に貯蔵し、時期特異的に短かったポリA鎖を伸長させることで翻訳を活性化する。申請者はこのポリA鎖伸長機構に、mRNAのU化が関与していることを見出した。すなわち、短いポリA鎖を持つサイクリンmRNAの3’末端に数塩基のU塩基が存在し、長くなったポリA鎖にはUが無いことを発見した。しかしながら卵母細胞におけるU化の生物学的意義やその分子機構は全く明らかではなく、本研究ではこれらの解明を目的とした。近年、哺乳類体細胞などにおいてもmRNAの3'末U化が起きており、U化はmRNAの分解マーカーとしての役割を担うことが報告された(J.Lim et al.,2014)。一方で、卵細胞におけるU化は安定的に貯蔵される短いポリA鎖をもつmRNAに対して起きる。故に、卵でのU化はmRNAの安定化に寄与している可能性が考えられ、本年度はこの仮説の検討を行った。 昨年度開発した方法を応用し、放射性ラベルしたサイクリンmRNA末端をU化修飾したもの・しなかったものの2種のRNAを合成した。そしてこれらを卵内にマイクロインジェクションしたところ、U化あり・なしのいずれのRNAもホルモン処理前後で安定であった。さらに、ホルモン処理することで、U化修飾が“除去”され、ポリA鎖伸長が起きることが証明された。またこのU除去→ポリA化にはmRNAの5’UTR部分またCDSは必要でないことが明らかになった。これらの結果から、現在、一般に哺乳類体細胞で信じられている「RNA末端のU鎖によってRNA分解が起きる」は卵母細胞においては当てはまらず、むしろUが付加されることによって、ポリA化が抑制されていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、卵母細胞のmRNA U化修飾がmRNAの安定性に与える影響を検討することを計画していた。 これを行うために、正確な配列を持つmRNAをin vitroで合成する方法、そしてその合成mRNAの末端に数塩基のU塩基を付加・モニターする技術を新たに確立した。そして実際に卵でのU化RNAの安定性検討に至り、卵細胞でのmRNA のU化は、体細胞での分解のマーカーとしての働きとは異なり、ポリA鎖伸長調節に関与するという新たな可能性を見出した。また現在これらをまとめた原著論文を執筆中である。よって本研究はおおむね順調に進展していると判断した。なお、U化の生理的な役割が、体細胞と卵母細胞では一見異なるようにも思われるが、体細胞U化修飾がmRNAの不安定化を経たポリA鎖伸張抑制に働いている点では卵母細胞と同じである。すなわち、U化は、ポリA鎖伸張抑制を経由した新たな翻訳制御機構であると解釈できる。本研究によって、真のU化の意義があぶり出されてきたのだ。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、卵成熟過程におけるmRNAポリA鎖伸長が起きる時期は、mRNAの種類によって異なっており、3’UTRに存在するAAUAAA配列とRNA結合タンパク質CPEBの結合サイトCPE配列の位置関係などによって制御されることが報告されてきた(K. Arumugam, et al.,2010)。一方、本研究により、卵細胞におけるサイクリンmRNAの U化が、ポリA鎖伸長抑制を担っている仮説を提唱することができた。もしもこの仮説が正しいならば、サイクリン以外の卵内のさまざまなmRNAのポリA伸長タイミング制御に、U化・脱U化が関与している可能性も考えられる。実際、準備的な実験において、サイクリン以外のmRNAにもU化が存在していることを見出している。そこで今後は、どのmRNAにU化が起こっているのかを明らかにし、脱U化のタイミングを計測することで、時期特異的なU化除去による、新たなポリA鎖伸機構の全容を明らかにできると期待している。そのために来年度は、各ステージの卵細胞のmRNAの末端修飾について次世代シーケンサーを用い網羅的に明らかにすることを目指す。 さらに、26年度の研究では卵成熟時にサイクリンmRNAのU修飾が除去されポリA化が起きることを証明したが、U修飾除去についての分子機構は全く明らかでない。そこで、in vitroで合成したU化mRNAをキャリアとしてプルダウンアッセイを行い、卵母細胞無細胞系からU修飾の存在特異的に結合する因子を特定することを目指す。
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