2014 Fiscal Year Annual Research Report
サリチル酸とジャスモン酸シグナル間の分子スイッチの同定及びその機能解析
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13J10799
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡 和 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内酸化還元反応 / 植物病害抵抗性反応 / 国際情報交換 / 植物ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は一般的に、絶対寄生菌に対してはサリチル酸(SA)を、腐生菌や昆虫による食害にはジャスモン酸(JA)を介した防御応答を誘導するが、両抵抗性反応は互いに拮抗的に作用する。SAとJAの拮抗反応の制御因子と分子機構の大部分は不明であるため、クロストークを制御する因子の同定及びその機能解析を目的とした。これまでの結果からSA/JAシグナルの選択的活性化には細胞内酸化還元因子であるグルタチオンが関与することが示唆されており、特に細胞内タンパク質に対するグルタチオン化がSAシグナルの鍵制御因子であるNPR1の活性化に必須であることを見出した。そこで細胞内グルタチオン化レベルの上昇によるNPR1活性化メカニズムのより詳細な理解及び、JAシグナルによるSAシグナル抑制メカニズム解明を試みた。 グルタチオン化を誘導した植物タンパク質抽出液に対してNPR1を加えると、顕著なオリゴマー化が認められることから、NPR1はタンパク質に付加したグルタチオンを認識し安定化すると考えられる。NPR1はジスルフィド結合を介したオリゴマーを形成するため、グルタチオン感受性システイン残基の同定を試みた。NPR1の安定化に寄与するシステイン残基として、現在、C150、C155、C156、C160を候補として絞り込んでおり、システイン変異植物を作出中である。 SAシグナルにおいてグルタチオン量が増加するのに対してJAでは減少する。これまでに、JA依存的に発現誘導するグルタチオン分解酵素を見出していたため、同遺伝子欠損変異体が抵抗性誘導に与える影響について検討を行った。その結果、変異体では、グルタチオン化レベルが上昇し、JAによるSAシグナルの抑制が解除されたため、JAはグルタチオン分解酵素を発現誘導することによりグルタチオン化を抑制、NPR1の活性化を阻害し、その結果としてSAシグナルを抑制すると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画実施計画に記載した作出予定の組換え植物の多くは作出が完了し、抵抗性誘導に与える影響を確認中である。SAシグナルの鍵転写補助因子であるNPR1は細胞内グルタチオン化レベルを認識することにより活性化することを見出したが、被修飾システイン残基は明らかになっていない。そこで、グルタチオン感受性システイン残基の同定を試みるため、全システイン残基に対してセリンに置換した変異体を作出し、グルタチオンによるオリゴマー化テストを行った。その結果、タンパク質タンパク質相互作用に関与するBTBドメインとアンキリンリピートに含まれる全システイン残基に変異を加えてもオリゴマー化を示した。そのため、BTBドメインのみトランケーションし、オリゴマー化テストを行った結果、C150、C155、C156、C160を候補システインとして絞り込んだ。現在はシステイン変異植物を作出するとともに、グルタチオン感受性のより高いシステイン残基の同定を試みている。 JAシグナルにより発現誘導するグルタチオン分解酵素の多重変異体を作出し、抵抗性誘導に与える影響について検討を行った。その結果、多重変異体では、グルタチオン化レベルが上昇するとともに、JAによるSAシグナルの抑制が解除されることから、JAはグルタチオン分解酵素を発現誘導することによりグルタチオン化を抑制、NPR1の活性化を阻害し、その結果としてSAシグナルを抑制すると示唆された。 イネは健常時においてもSA及びグルタチオンが多量に蓄積しており、シロイヌナズナのようなSA/JAクロストークが明確でないと報告されている。イネもシロイヌナズナと同じ制御システムを保有しているのであれば、常にNPR1が活性化するためにクロストークが明確でないと考えられる。そこで、イネにおけるクロストークシステムを検討するために、グルタチオン分解酵素過剰発現イネを作出した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、グルタチオン感受性システイン変異npr1植物を作出する。同植物を用いてNPR1のグルタチオン化認識による活性化が誘導する抵抗性について検討する。in vivoにおいてNPR1がグルタチオン化しているかを検討するために、35s::NPR1-GFP植物を用いてNPR1のプルダウンアッセイを行い、グルタチオン抗体で検出する。さらに、細胞内グルタチオン化レベルによるNPR1活性化メカニズムをより詳細に示すために、SA処理における還元型、酸化型グルタチオン及びタンパク質に対するグルタチオン化量をHPLCを用いて定量し、同条件をin vitroにて再構築、NPR1のオリゴマー化実験を行う。 グルタチオンによる抵抗性誘導はSA合成を介して生じている可能性が考えられるため、NahG植物及びNahG;npr1植物に対しグルタチオンを処理し、NPR1依存的な抵抗性反応が誘導されるかを確認する。グルタチオンによるSAシグナルの活性化がNPR1非依存的である可能性が残るため、pad2;npr1植物におけるグルタチオン応答を調査し、GSHがNPR1依存的にSAシグナルを活性化することをqRT-PCRにて解析する。 前年度に作出したグルタチオン分解酵素過剰発現イネを用いて、NPR1の蓄積及び、SA/JA応答について解析を行う。 以上の結果をまとめ論文とする。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] レドックス感受性転写補助因子であるNPR1が制御するサリチル酸依存的植物免疫機構2014
Author(s)
多田安臣, 野元美佳, 岡和, Mohan, R., 塚越啓央, 時澤睦朋, 大西優太朗, 山本義治, Dong, X., Spoel, S. H.
Organizer
第86回日本遺伝学会大会
Place of Presentation
長浜バイオ大学
Year and Date
2014-09-17 – 2014-09-19
Invited