Research Abstract |
本年度は, ①公立高校入試問題の国語読解テストにおける記述式問題の分類及び出題傾向の把握, ②回答欄の字数制限が能力評価に及ぼす影響に関する学年間の比較, の2点に関する検討を行った。 ①については, 過去5年間47都道府県で実施された論説文・説明文(計240題)を対象とし, その著者, 作品名, ジャンル及び記述式問題(773問)における構造的性質について検討した。その結果, 各都道府県における問題本文の出題に関して, 一部複数回用いられる特定の著者や作品が確認された。また, 例示の効果が明らであり, 論理展開が明確な文章を選定することが良質な問題本文の出題につながると考えられた。設問の出題に関しては, 問題本文の理解力について構造的に測定する場合, 「文脈考慮」や「図・表」の設問が設定され, 該当箇所の具体例や言い換えを問う場合は「対応・言い換え」の設問が設けられると考えられた。さらに, 理解力に加え, 特に表現力を測定したい場合は, 「説明」, 「まとめ」, 「自分の考え」を求める内容の設問に加え, 長い記述を求める回答欄を設ける必要があると考えられた。 ②については, 高校入試問題を基に作成された国語テストを用いて, 特定の設問における回答欄の字数制限を操作し, その違いが受検者の能力評価に及ぼす影響について検討した。具体的には, A : 四十五字以上五十五字以内で書きなさい, B : 五十五字以内で書きなさい, C : 字数制限を行わない, の3条件を設定した。中学2年生242名, 中学3年生236名, 翌年の中学3年生236年(先に述べた中学2年生と同一集団)が受検した。その結果, 字数制限のない条件(C条件)の方が制限のある条件に比べ(A条件とB条件), 回答として求められる情報を記述する割合が高く, また, 字数制限を設けないことが得点率と識別力を高くすることが示唆された。さらに, 回答方法の違いは, 学年集団が異なることにも影響することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 国語読解テストにおける記述式問題の分類及び出題傾向を把握することにより, 国語読解テストにおける研究課題を見出すことができた。また, その課題の一部となる回答欄の字数制限に関して, 中学生を対象に学年間の検討を行い, 回答欄の字数制限の有無が能力評価に影響を及ぼすことが確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回検討した回答欄の設問は, 「2つの条件の回答を求める設問」という特定の設問に関する知見であった。この知見を一般化するためには, 別の条件や内容を備えた設問, さらには別の問題本文を用いた設問に関しても検討する必要があるため, 今後はこれらの課題について取り組んで行く予定である。また, 記述式問題を評価するための基準(解答類型)に関しても検討する予定である。
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