2013 Fiscal Year Annual Research Report
新規窒化物半導体共振器構造による光制御に関する研究
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13J10877
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
正直 花奈子 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 窒化物半導体 / 結晶成長 / エピタキシャル成長 / 有機金属気相エピタキシャル法 / InGaN / MOVPE |
Research Abstract |
窒化物半導体は、(i)全可視光域をカバーするバンドギャップエネルギー、(ii)室温でも安定な励起子の二つの特性を有する。本研究の大目的である集積化が可能な窒化物半導体の新規共振器構造を用いて量子光学的事象発現の実証を達成するためには、上記の両方を活かす結晶成長技術と素子構造作製技術が必須である。 本年度は、主に(i)の特性を発揮する結晶成長技術の確立を行った。具体的には、有機金属気相エピタキシャル法(MOVPE法)を用いて、窒化ガリウム(GaN)と窒化インジウム(InN)の混晶である窒化インジウムガリウム(InGaN)の結晶成長を行った。この際、結晶成長の面方位として、無極性面(m面)と、N極性面(-c面)を選択し、①m面InGaNのIn組成分布観察による相分離の解明、②MOVPE成長-c面InGaN成長におけるc面サファイア基板微傾斜角のIn組成への影響の解明、③MOVPE成長による-c面InGaN/GaN多重量子井戸(MQW)構造の表面平坦化を行った。この結果、①よりInGaNの(i)の特性を活かすには、非平衡な成長方法で成長表面を平坦に保つ結晶成長手法を確立すればよいということがわかった。これをもとに、②において、MOVPE法を用いて-c面InGaN成長を行った結果、基板の微傾斜角の増加により表面のステップ端の密度が増加してステップ端におけるln取り込みが増加し、lnGaNのln組成が増加することがわかった。これは、基板微傾斜角の増加が(i)の特性を活かす高In組成化に有利であることを示している。しかし一方で、(ii)の特性を活かすためには、ステップ端における局所的なIn取り込みは組成むらを引き起こし、発光波長の狭線幅化を阻む問題となることも分かった。また、③を行い、目的とした原子層レベルで平坦な表面を有する-c面InGaN/GaN MQW構造の成長に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集積化が可能な窒化物半導体新規共振器構造を用いて量子光学的事象発現の実証を大きな目標として掲げ、本年度はその素子構造のうちの肝となるInGaN活性層の諸物性評価と光学的品質の改善を行った。この結果、発光線幅のブロードニングの起源として熱力学的平衡論に基づく相分離傾向のみならず、成長表面のラフニングにともなう組成むら形成の抑制が極めて重要であることを解明し、さらに成長表面のラフニングの抑制方法を模索した。これは、上記事象の原理実証に必要となる狭線幅かつ高強度の発光を呈するInGaN量子井戸の実現方法に迫るものであり、おおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度行ったMOVPE成長による-c面InGaN/GaN多重量子井戸構造の表面平坦化の指針もとにして、MOVPE成長-c面InGaN光学素子による全可視光域での波長発光の実証を行う。また、本年度に明らかにしたMOVPE成長-c面InGaN成長におけるc面サファイア基板微傾斜角のIn組成への影響より、ステップ端におけるIn取り込みによる発光線幅の広がりが問題であることがわかったため、これを解決し発光の狭線幅化を試みる予定である。
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Research Products
(16 results)