2013 Fiscal Year Annual Research Report
PIPsシグナルにおけるホスファチジルイノシトール脂肪酸鎖の生物学的意義の解明
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13J10893
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 卓也 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / 高度不飽和脂肪酸 / PIPs / アクチン |
Research Abstract |
アラキドン酸は哺乳動物の細胞中に存在する高度不飽和脂肪酸の一つであり、特に脳に多く存在することが知られている。これまでに栄養学的な研究からアラキドン酸が発達期の神経に重要であることや、アラキドン酸摂取による脳・神経機能の亢進作用が見られることが数多く報告されている。ホスファチジルイノシトール(PI)は、他のリン脂質と比較してアラキドン酸を多く含む分子種が大部分を占めることが知られている。またPIはその極性頭部がリン酸化されたホスホイノシタイド(PIPs)の形で細胞内シグナリング経路を制御していることが知られているが、そのPIPs代謝に脂肪酸鎖の影響が示唆されてきている。 これまでにPIヘアラキドン酸を導入する酵素LPIAT1欠損マウスにおいて神経細胞移動の異常や細胞死が生じ、脳の形態異常を来すことを見出しており、PIあるいはPIPs中のアラキドン酸が脳の形態形成に重要な機能を果たしていることが明らかしてきた。しかしPI中の脂肪酸鎖がどのようにして個体の機能に影響を与えるのか、どのような分子がそのような現象に関わるのかほとんど明らかになっていない。本年度では、PI中のアラキドン酸がどのようにして生体機能に影響を与えるのかを明らかにすることを目的として研究を行った。 当研究室では脂肪酸不飽和化酵素を欠損した高度不飽和脂肪酸(poly unsaturated fatty acid, PUFA)を持たない線虫を樹立している。PUFAの機能を調べるためにPUFA欠乏線虫の解析を行ったところ、上皮系細胞の形態に異常が生じていることが明らかになった。さらに上皮組織におけるアクチンフィラメントの染色を行い観察したところ、その構造が乱れていた。LPIAT1欠損線虫を用いた解析から、これらの表現型はPIへPUFAが取り込まれることが重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、線虫や培養細胞を用いて解析を進め、線虫の上皮細胞の形態維持及び上皮における正常なアクチン骨格形成に、アラキドン酸等の高度不飽和脂肪酸がPIに取り込まれることが重要であることを見出した。このことは上皮細胞形態およびアクチン骨格形成におけるPI中のPUFAの意義を明らかにできたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きPIPsシグナルにおけるホスファチジルイノシトールの脂肪酸鎖の意義およびその作用メカニズムを解明することを目指す。現在線虫で見出しているPIへのPUFA取り込み依存的なアクチン骨格の乱れが、どのようなPIPsの作用であるかを遺伝学的・生化学的解析から明らかにしたい。また現在コンディショナルLPIA1欠損マウスの解析も開始しており、その表現型の解析を通して成体における意義についても明らかにしていきたい。
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